雌雄同体(読み)シユウドウタイ(英語表記)hermaphrodite

翻訳|hermaphrodite

デジタル大辞泉 「雌雄同体」の意味・読み・例文・類語

しゆう‐どうたい【雌雄同体】

動物で、正常な状態で同一個体内に雌雄両性形質がみられること。両性腺をもつカタツムリ卵巣精巣とをもつミミズなど。

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精選版 日本国語大辞典 「雌雄同体」の意味・読み・例文・類語

しゆう‐どうたい【雌雄同体】

〘名〙 同一個体で雌雄の生殖器をもっているもの。ミミズ、カタツムリ、ジョウチュウなどにみられる。雌雄同体であっても、二匹が交接して生殖を行なうものが多い。雌雄異体の動物でも異常的に同体となる場合がある。植物では雌雄同株という。〔新しき用語の泉(1921)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「雌雄同体」の意味・わかりやすい解説

雌雄同体 (しゆうどうたい)
hermaphrodite

一つの動物個体内に雌雄の生殖器官がともに発達したもの。植物では雌雄同株という。この雌雄同体現象hermaphroditismは下等な種に例が多くみられ,雌雄異体現象gonochorismより原始的な型だと考えられる。ミミズやマイマイは機能的な卵巣と精巣がほぼ同時に成熟するが,これを常時雌雄同体現象という。クロダイや二枚貝のカキは,一度雌ないし雄の機能をした後,雄ないし雌として機能する。雌性が先に成熟するものを雌性先熟protogyny,逆に雄が先なら雄性先熟protandryといい,どちらも隣接的雌雄同体現象という。また,エゾアカガエルは遺伝的な雄の生殖器官もまず卵巣として分化し,変態時に精巣へ転換する。これは,幼時雌雄同体現象と呼ばれる。ヒキガエル類では精巣を除去すると,卵巣の痕跡器官であるビダー器官Bidder's organが機能的な卵巣に発達するので,痕跡的雌雄同体現象という。以上の雌雄同体現象の機構は不明だが,短日処理や高温処理,ホルモン処理によって異常を誘導したり,突然変異体を使うことによって,しだいに解明されつつある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「雌雄同体」の意味・わかりやすい解説

雌雄同体
しゆうどうたい

生物学用語で、同一の個体に雌雄両性の形質がみられる場合をいう。雌雄異体の対語。植物では雌雄同株ともいう。動物では、ミミズのように卵巣と精巣とを同時に備えている場合と、カタツムリのように一つの生殖巣中に卵と精子とをもつ両性腺(せん)を備えている場合とがある。雌雄同体の動物でも、同一の個体内の両性の生殖細胞の間で受精(自家受精)することはほとんどない。ナメクジは、交尾する相手のいないときに初めて自家受精卵を産む。ユウレイボヤでは卵を包む被覆細胞層が自家の精子を通過させにくい。一方、カキやクロダイでは雌雄の生殖巣の成熟期が時間的にずれているため自家受精はおこらない。熱帯魚のソードテールでは性の転換が容易におこり、雌雄を交互に繰り返すことがある。カエルのなかには、幼時にはすべての個体が卵巣をもっており、やがて一部が性転換して雄になるものや、雄の精巣に付随する痕跡(こんせき)器官が卵巣の機能を果たすように発達するものなどがある。雌雄同体の動物では、一般に卵と精子の染色体数は同じで、性染色体の区別もないと考えられる。

[町田武生]

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百科事典マイペディア 「雌雄同体」の意味・わかりやすい解説

雌雄同体【しゆうどうたい】

雌雄異体に対する言葉。動植物において同じ個体中に雄および雌の生殖器官をもつもの。植物では雌雄同株ということもあり雌雄異株のものよりはるかに多い。動物では原則として比較的下等なものに限られる。雄性生殖器官と雌性生殖器官がほぼ同時に成熟する場合を常時雌雄同体(ミミズ,カタツムリ),時間的に前後して現れる場合を隣接雌雄同体(カキ,クロダイ)と呼ぶ。その際,雌性が先に成熟するものを雌性先熟,雄性が先のものを雄性先熟と呼ぶ。元来雌雄異体の生物が変則的に雄および雌の特徴を兼ね備える場合は間性といい,雌雄同体とは区別される。
→関連項目自家受精雄性先熟

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「雌雄同体」の意味・わかりやすい解説

雌雄同体
しゆうどうたい
hermaphroditism

雌雄の両生殖巣をもつ個体をいう。雌雄異体に対する語。たとえばカタツムリ,ミミズなどにみられる。本来雌雄別なのに中間的に生じる間性 (半陰陽) とかモザイク的に両形質をそなえているものはこれに入れない。

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