集約農業(読み)しゅうやくのうぎょう(英語表記)intensive agriculture

精選版 日本国語大辞典 「集約農業」の意味・読み・例文・類語

しゅうやく‐のうぎょう シフヤクノウゲフ【集約農業】

〘名〙 一定の耕地面積からより多く作物を生産するために、多くの資本労力を投下する農業経営方法。⇔粗放農業。〔大増補改版新らしい言葉字引(1925)〕

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デジタル大辞泉 「集約農業」の意味・読み・例文・類語

しゅうやく‐のうぎょう〔シフヤクノウゲフ〕【集約農業】

一定面積の土地に多量の資本・労働を投下して、土地を高度に利用する農業経営。⇔粗放農業

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改訂新版 世界大百科事典 「集約農業」の意味・わかりやすい解説

集約農業 (しゅうやくのうぎょう)
intensive agriculture

粗放農業extensive agricultureに対する語で,土地利用の集約度の高い農業をいう。集約度とは一定の土地に対する投下費用の大きさのことで,土地面積当りの農業経営費(物財費,労働費,資本利子)でみるのが一般的であるが,現物量でとらえて議論する場合もある。また経営費の内容からみて,労働費の比重が相対的に高いものを労働集約的農業,物財費の高いものを資本集約的農業という。

 古い時代ないし未開社会の農業では,労働投入も資本財投入も少ない粗放農業が支配的であるが,経済発展とともに,より多くの労働や資本財(機械,施設,農薬肥料,材料等)を投入して,労働生産性とともに土地生産性(面積当り収量ないし生産額)を高める方向,つまり集約的(とくに資本集約的)農業の方向へ発展するのが一般的である。たとえば,西ヨーロッパの穀作農業における三圃式農業から穀草式農業を経て輪栽式農業に至る発展はその一例である。空間的にみても,交通地位のよい都市近郊農業では園芸などの集約農業が,遠隔地では牧畜などの粗放農業が営まれる傾向がある。また,人口稠密(ちゆうみつ)なアジアのモンスーン地域では労働集約的農業が,アメリカやオーストラリアなどの新大陸では大型機械による労働粗放的な資本集約的農業が展開している。最近の先進国農業の一部には,経営組織としては従来の多部門からなる複合経営複合農業経営)が専門化,単一化して単純化する,いいかえれば組織集約度としては粗放化するが,それぞれの部門の経営管理の集約度は高めるという形での動きがみられる。
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百科事典マイペディア 「集約農業」の意味・わかりやすい解説

集約農業【しゅうやくのうぎょう】

単位耕地面積に多くの資本と労働力を投下する農業経営。資本を多く投下するものを資本集約的農業,労働力を多く投下するものを労働集約的農業という。耕地面積の少ないところでは肥料,農機具,農薬等の生産手段と雇用労働力の多量投下で生産量と収益の増大を図る。日本では,稲作をはじめ施設園芸,酪農などすべて集約的である。なお理論的には集約化が一定限度に達した後は収穫逓減の法則が作用する。→粗放農業
→関連項目農業

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「集約農業」の意味・わかりやすい解説

集約農業
しゅうやくのうぎょう

単位面積当りの資本と労働の投下量が比較的多い農業をいい、このように農業経営の集約度を高めることを農業集約化という。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「集約農業」の意味・わかりやすい解説

集約農業
しゅうやくのうぎょう
intensive agriculture

資本,労働力の多量投下によって単位面積から高い収益をあげる農業。粗放農業に対する。一般に先進国の近郊農業は集約的で,野菜,花卉栽培,酪農などを行うことによって狭い土地から高い収益をあげている。世界的にはアジアの農業は労働集約的で,土地生産性はきわめて高いが,労働生産性は低い。

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世界大百科事典(旧版)内の集約農業の言及

【農業】より

…畜力利用(耕耘,運搬など)が進んだのは第2次大戦前後,中・小型の農業機械が普及してきたのは1950~60年代以降で,それまでは基本的に手労働の農業であった。また肥料の多用も顕著な特徴で,こうして多肥多労の集約農業として展開し,土地生産性(単位面積当り収量)が高く,またそれを追求することが主要な方向とされてきた。(3)耕地の約半分を占める畑地で,多種多様な畑作物の生産がなされてきたことである。…

※「集約農業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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