(読み)トナリ

デジタル大辞泉 「隣」の意味・読み・例文・類語

となり【隣】

並んで続いているもののうち、最も近くにあること。また、そのもの。「の席」「町」
左右両側にある家。また、その家の人。「留守をたのむ」
[類語](1わき片脇傍ら片方かたえ横手横合いそば近間最寄り近く付近近辺近傍界隈かいわい近回りそのへん四隣しりん隣組向こう三軒両隣りょうどなり/(2両隣近隣近所隣近所

りん【隣】[漢字項目]

常用漢字] [音]リン(呉)(漢) [訓]となる となり
〈リン〉となり。となりあう。「隣家隣国隣室隣人隣接近隣四隣善隣
〈となり(どなり)〉「隣近所両隣
[補説]「鄰」は異体字
[名のり]さと・ただ・ちか・ちかし・なが

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「隣」の意味・読み・例文・類語

となり【隣】

〘名〙
① 並び続いているもののうち、そのもののすぐ近くにあるもの。
※法華義疏長保四年点(1002)一「隣(トナリ)賢にして聖に亜(つ)ぐを賢と曰ふ」
② 特に、並び続いているすぐ両横の家。隣家。
万葉(8C後)一四・三四七二「人妻とあぜかそをいはむしからばか刀奈里(トナリ)のきぬを借りて着なはも」
※俳諧・笈日記(1695)上「秋深き隣は何をする人ぞ〈芭蕉〉」
③ 境が接している所。また、接近している場所・地域。
書紀(720)敏達三年七月(北野本訓)「朝庭を欺訛きまつれり一つなり。隣(トナリ)の使を溺殺せり二つなり」
④ 時間的あるいは抽象的に連続しているもののうち、ある時点・事柄の前後に接しているものをいう。
源氏(1001‐14頃)若菜下「雪のただいささか散るに、春のとなり近く梅の気色見るかひありてほほゑみたり」

とな・る【隣】

〘自ラ五(四)〙
① 互いに並ぶ。並び続く。
愚管抄(1220)六「太白木星火星となり、西の方によひよひすでに犯分に三合のよりあひたりけるに」
② 家が並び続く。家が隣接する。
※雑俳・柳多留‐一八(1783)「医者ととなってじゃうふだんおこされる」
境界が接する。土地続きになる。
※大唐西域記長寛元年点(1163)七「居人豊楽(ゆたか)にして邑里相ひ隣(トナレ)り」

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改訂新版 世界大百科事典 「隣」の意味・わかりやすい解説

隣 (となり)

居住の近接に伴って形成される社会関係のうち,とくに日常的に接触交流の大きい家をいう。向こう三軒両隣,壁隣(かべどなり),一隣(いちどなり),隣家(りんか),両隣家などともいう。これら特別な名称で呼ばれる隣の家は,ある家にとっての周囲の家すべてではなく,特定の家に限定されるのが普通である。町場や街村では,道路向かい側正面とその左右の3軒と,自分の家の並びの両側2軒の計5軒を向こう三軒両隣と称して,なにかにつけつきあうことが多いが,一般的には隣は2軒である。それは,隣の家の設定が各家の任意の判断や意志でなされたものでなく,ムラなりマチの組織と密接に関連しているからである。

 ムラあるいはマチには,回り戸口(まわりとぐち)とか家順と呼ばれて,全部の家を次から次へ順番に鎖状に結びつけ,回覧板や各種の連絡を送ったり,当番や講の宿を順々に担当したりするしくみがある。隣は多くその順序のなかの自分の家の両側の家である。連絡をくれる家とそれを渡す家の2軒が,日常的にも深い接触があり,互いに助け合う隣になる。したがって,2軒は相互に相手の隣となるが,Bの家の隣はAとC,Cの家の隣はBとDというように,各家ごとに隣の家は一部ずつずれており,一定の成員をもった団体としては存在しない。隣は,日常的には,気軽に行き来して,米や食料あるいは小銭貸し借りをし,また互いにもらい風呂をしたりした。さらに,一定の場面で重要な役割を果たすことがしばしば制度化されている。関東地方などでは,婚礼の司会役や接待役,葬式の準備の責任者や進行役は両隣家がすることになっている所も多い。なお,家順と無関係に隣が形成されている所も少なくないが,その場合でも隣の範囲はごく近接の2,3軒である。いずれにしても,隣は居住の近接に基礎をおくため,住居を移転しないかぎり何代たっても変化しないので,ときには親類や本分家関係よりもその存在が強調される。そして〈隣は何をする人ぞ〉という表現が,都市の冷たい社会関係を示すことになる。
近隣集団 → →隣組
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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【郷里制】より

…――里正は兼ねて農桑を課植し,賦役を催駆す――。四家を隣となし,五家を保となす。保に長あり,もってあい禁約す〉と規定されている。…

※「隣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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