日本大百科全書(ニッポニカ) 「隠田(おんでん)」の意味・わかりやすい解説
隠田(おんでん)
おんでん
「かくしだ」ともいい、隠地(おんち)、隠没田(おんぼつでん)、院田(いんでん)、忍田(しのびた)などともいう。畑の場合は隠畑(かくしばた)という。農民が隠れて耕作し、租税を納めず作取りをする田畑のこと。古くは律令(りつりょう)時代からみられ、絶戸の田や死亡者の田、新規開発の土地を隠田にする例があり、政府は巡察使を派遣し、密告を奨励して摘発に努めた。中世になっても荘園(しょうえん)などで広くみられ、鎌倉幕府も発見しだい没収した。戦国時代から江戸時代にかけて、戦いに敗れた落武者などによって、隠田村として開発される例もあり、太閤(たいこう)検地や江戸時代の検地では、その摘発が一つの目的であった。江戸時代には、発見しだい没収し、磔(はりつけ)や追放に処し、村役人も処罰したが、根絶できなかった。
[上杉允彦]