陽炎型駆逐艦(読み)かげろうがたくちくかん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「陽炎型駆逐艦」の意味・わかりやすい解説

陽炎型駆逐艦
かげろうがたくちくかん

旧日本海軍の代表的駆逐艦。 1920年代後半に特型駆逐艦が出現し,そのあとロンドン条約の制限などがあり,やや小型 (公試排水量 1680t) の初春型6隻,白露型 10隻が建造された。その後,公試排水量 2370tの朝潮型 10隻,さらに 39年に陽炎型が建造され,ほぼ理想どおりの駆逐艦が完成した。この型は甲型と称され,太平洋戦争中にかけて 18隻が建造された。主要目は,公試排水量 2500t,速力 35kn,12.7cm砲6,61cm魚雷発射管 (九三式魚雷 16搭載) 8,23号電波探信儀 (対空用メートル波) ,22号電波探信儀 (対水上用,センチ波) 各1,水中探信儀1を装備。ほぼ同型の夕雲型 20隻と特型 24隻を含むこれら約 90隻は,第2次世界大戦の交戦国中最優秀駆逐艦といわれた。太平洋戦争の前半においては,九三式魚雷の威力は圧倒的で,駆逐艦としても優勢な重砲装と優秀な光学兵器に支援され,特に夜戦においては一方的勝利を得ていた。しかし後半には電子諸装置の立遅れなどのため,夜戦はもとより,対空・対潜戦闘においても十分にその能力を発揮できなくなった。なお,この型の『雪風』は開戦から終戦まで,ほとんどの海戦参加戦艦大和』の沖縄特攻にも随伴して生還。戦後中華民国に引渡され,台湾廃艦となった。

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