陸稲(りくとう)(読み)りくとう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「陸稲(りくとう)」の意味・わかりやすい解説

陸稲(りくとう)
りくとう

水田で栽培される水稲に対して、畑で栽培されるイネのことをいう。また前者を「みずほ」、後者を「おかぼ」ともよぶ。陸稲は、水稲が栽培されているうちに、しだいに灌漑(かんがい)水がない土地でも育つものがみいだされてできたものと考えられている。現在、東南アジアを中心に山岳地帯や水利の悪い所に広く栽培されている。アメリカには18~19世紀に東南アジアから入った。日本では13世紀から記録があるが、弥生(やよい)時代にすでに伝来していたとみられている。なかには水稲から陸稲に転化した品種もあり、また日清(にっしん)戦争のころ導入された戦捷(せんしょう)、凱旋(がいせん)などの品種は現在の品種の主要な遺伝母本となっている。関東地方北部や南九州の畑作地帯におもに栽培されるが、生産量は水稲の0.2%(1995~2000平均)にすぎない。

 陸稲の形態や生理は水稲と大差ないが、畑の環境に適応して、根が深く張るとか、発芽限界土壌水分が低いなど若干の違いがある。陸稲は畑に育つが、干魃(かんばつ)にはきわめて弱く、生育収量は降雨量に影響され、水稲に比べると収量は半分以下(10アール当り200キログラム前後)で、年による変動が大きく不安定であるため、耐干性の強い品種が重要視されている。陸稲は畑作物として、サツマイモダイズ、タバコ、野菜類などと輪作され、ムギ類と二毛作される。直播(じかま)き栽培され、前作物の収穫が後れるときには、うね間に播かれることもある。陸稲にも粳(うるち)と糯(もち)の品種区別があり、粳は飯用、糯は餅(もち)にされる。陸稲の餅は水稲に比べて粘りが軽く食味が好まれるため、糯米(もちごめ)が粳よりも多く生産されている。

[星川清親]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android