陸田(読み)りくでん

精選版 日本国語大辞典 「陸田」の意味・読み・例文・類語

りく‐でん【陸田】

〘名〙
① 畑。また、令制下で、五穀をつくる乾田をいう。白田
続日本紀‐天平元年(729)一一月癸巳「阿波国山背国陸田者、不高下、皆悉還公」 〔晉書食貨志
ポンプで灌水し水稲栽培を行なう畑。地下水などの得やすい関東平野で第二次世界大戦後普及した。

おか‐だ をか‥【陸田】

〘名〙 畑。りくでん。⇔水田(みずた)
※雑俳・住吉みやげ(1708)「岡田の芋に水かって来た」

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デジタル大辞泉 「陸田」の意味・読み・例文・類語

りく‐でん【陸田】

はたけ。また、律令制下で、五穀をつくる乾田のこと。白田。⇔水田
畑にポンプで水を入れて、水稲を栽培するようにしたもの。第二次大戦後に関東平野でみられた。

おか‐だ〔をか‐〕【陸田】

畑。りくでん。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「陸田」の意味・わかりやすい解説

陸田
りくでん

主に雑穀を栽培する耕地で、水稲耕作の水田に対する語。「はたけ」の一種。『日本書紀』神代紀(じんだいき)に、「粟・稗(ひえ)・麦・豆」を「陸田種子」とする記述がある。また、大化元年(645)9月条にみえる「分割水陸」の語句は、「水陸(水田・陸田)を分け割(さ)きて」の意で、「たはたけ」である可能性が強い。軍防令(ぐんぼうりょう)には、防人(さきもり)が勤務地で行う水田・陸田の農耕の規定があり、この陸田では種々の蔬菜を栽培する。律令制下では、713年(和銅6。『類聚三代格(るいじゅうさんだいきゃく)』による。『続日本紀(しょくにほんぎ)』は715年(霊亀元年)とする)10月、男夫1人に2段(たん)を与え(口分田(くぶんでん)の班給額と同じ)、麦・粟の雑穀栽培を奨励した。また、719年(養老3)9月に天下の民戸に1~20町を支給し、段ごとに3升の粟を地子(じし)として徴収した。このような雑穀栽培の奨励は、備荒対策の性格が強かった。

 班田収授は水田を対象としていたが、水田が少なかった山背国(やましろのくに)(のち山城国)・阿波国においては、水田に交えて陸田が班給の対象となっていた。

[吉村武彦]

『青木和夫ほか校注『続日本紀2』(『新日本古典文学大系13』1990・岩波書店)』『木村茂光『日本古代・中世畠作史の研究』(1992・校倉書房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「陸田」の意味・わかりやすい解説

陸田 (りくでん)

畠のことであるが,日本古代の律令制下では,雑穀類を栽培する畠をとくに陸田と称し,他の畠とは区別し扱うようになる。まず715年(霊亀1)男夫1人に陸田2反の耕種が命じられたが,719年(養老3)に法令改正があり,天下の民戸に陸田1町以上20町以下が支給され,1反当りアワ3升の地子が徴収されるようになった。陸田の栽培植物として政府が推奨したのはアワや麦で,とくに麦を奨励し,国司が政府へ提出する公文の中には麦畠帳が含まれていた。陸田の制度は,備荒と財源拡大の一石二鳥をねらい,かつこれにより班田農民の没落を少しでも阻止しようとしたものであったが,水田の少ない山城・阿波両国では陸田も班田収授の対象とされた。政府による陸田経営の奨励も,青田売りなどがあって期待どおりにはゆかなかったが,地子の徴収はその後も続き,中世の荘園における反別1斗ないし1斗5升程度の麦地子の徴収へと発展していったようである。
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世界大百科事典(旧版)内の陸田の言及

【畑∥畠】より

…中世までは常畠である〈畠〉の字と,焼畑をさす〈畑〉の字とはかなり厳密に使いわけられていたが,戦国末期から近世初頭にかけて〈畠〉と〈畑〉の混用が始まり,17世紀の半ばには検地帳類でもほとんど〈畑〉の字ばかりになっていった。
[古代]
 律令用語としては,水稲以外のものをつくるところは〈園地〉〈(その)〉などであり,これと715年(霊亀1)に令外の制として定められた〈陸田〉とが,畠地の公式用語であった。しかし8世紀以降の古文書,絵図などには〈畠〉の字が広く用いられており,しかも国語の〈はたけ〉が〈園地〉〈陸田〉から〈畠〉に至るまでのすべての地目に通用する訓であったために,古代の畠制度の実態を探ることは著しく困難になっている。…

※「陸田」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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