陳舜臣(読み)チンシュンシン

デジタル大辞泉 「陳舜臣」の意味・読み・例文・類語

ちん‐しゅんしん【陳舜臣】

[1924~2015]小説家兵庫の生まれ。中国史を扱った小説を多く執筆し、日本人の中国への理解深化に大きく貢献した。「青玉獅子香炉せいぎょくししこうろ」で直木賞受賞。他に「枯草の根」「孔雀の道」「玉嶺よふたたび」「諸葛孔明」など。本格的な中国史書や「ルバイヤート」の翻訳でも知られる。芸術院会員。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「陳舜臣」の意味・わかりやすい解説

陳舜臣
ちんしゅんしん
(1924―2015)

小説家。神戸市生まれ。中国籍だったが1990年(平成2)に日本国籍を取得。大阪外国語学校(現大阪大学外国語学部)印度(インド)語科卒業。卒業後、研究所助手として母校に残ったが、第二次世界大戦後は、家業の貿易商に従事しながら小説を書き、1961年(昭和36)、神戸の中国人金貸し殺人事件を描いた『枯草の根』で江戸川乱歩賞を受賞し、執筆に専念した。続いて1969年『青玉獅子香炉(せいぎょくししこうろ)』(1969)が直木賞を、『玉嶺よふたたび』、『孔雀(くじゃく)の道』(ともに1969)が日本推理作家協会賞(1970)を受賞。一方、『実録アヘン戦争』(1971。毎日出版文化賞)、『敦煌(とんこう)の旅』(1976。大仏(おさらぎ)次郎賞)、『中国の歴史』(1980~1983)、『太平天国』(1982)、『諸葛孔明(しょかつこうめい)』(1991。吉川英治文学賞)など中国関係の作品も多く「中国と日本の歴史を踏まえた文学作品を通して日本文化に大きな貢献」をしたことで朝日賞(1993)を受賞。1995年(平成7)にこれまでの業績により日本芸術院賞、1998年に勲三等瑞宝章を受けた。2001年『陳舜臣中国ライブラリー』全30巻完結。

[都築久義]

『『玉嶺よふたたび』(1969・徳間書店)』『『孔雀の道』(1969・講談社)』『『敦煌の旅』(1976・平凡社)』『『中国の歴史』全15巻(1980~1983・平凡社)』『『太平天国』全4巻(1982・講談社)』『『陳舜臣全集』全27巻(1986~1988・講談社)』『『諸葛孔明』上下(1991・中央公論社)』『『陳舜臣中国ライブラリー』全30巻・別巻1(1999~2001・集英社)』『『枯草の根』(講談社文庫)』『『青玉獅子香炉』(文春文庫)』『『実録アヘン戦争』(中公文庫)』

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知恵蔵mini 「陳舜臣」の解説

陳舜臣

作家、評論家。1924年、台湾出身の貿易商の次男として神戸市で生まれる。大阪外国語学校(現大阪大学外国語学部)を卒業後、同校の助手となりインド語辞典の編纂作業に携わった。敗戦により国籍が日本から中国に変わり、学者としての見通しが立たなくなっため同校を辞職。61年、長編推理小説『枯草の根』(講談社)で江戸川乱歩賞を受賞し作家デビューした。初期にはミステリー小説が多かったが、以降は67年に大作阿片戦争』(講談社)を完成させるなど、中国の歴史を題材にした小説を多く著した。69年『青玉獅子香炉(せいぎょくししこうろ)』(文藝春秋)で直木賞、70年『玉嶺よふたたび』(徳間書店)『孔雀の道』(講談社)で日本推理作家協会賞、76年『敦煌の旅』(平凡社)で大沸次郎賞を受賞し、「三冠受賞」と話題になった。72年の日中国交回復前後から中国各地を巡り、長編小説や紀行書、評論を発表。90年、日本国籍を取得。95年「日本芸術院賞」、98年「勲三等瑞宝章」を受けた。2001年、代表作を集めた「陳舜臣中国ライブラリー」(全30巻)が完結。14年には、神戸市に「陳舜臣アジア文藝館」が完成した。15年1月21日、老衰のため死去。享年90。

(2015-1-23)

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百科事典マイペディア 「陳舜臣」の意味・わかりやすい解説

陳舜臣【ちんしゅんしん】

小説家。神戸市生れ。大阪外国語学校印度科卒。1962年《枯草の根》で江戸川乱歩賞受賞。その後,中国近代史への関心を深め大作《阿片戦争》(1967年)を執筆,1969年《青玉獅子香炉》で直木賞を受賞した。1970年,《玉嶺よふたたび》《孔雀の道》で日本推理作家協会賞,1971年《実録アヘン戦争》で毎日出版文化賞を受賞。《日本人と中国人》では,日中国交回復前に日本人の中国認識の誤りを指摘した。その後の作品に大仏次郎賞の紀行《敦煌の旅》,中国通史《中国の歴史》全15巻,歴史小説《太平天国》全4巻などがある。本籍は台湾台北市,1973年に中華人民共和国の国籍を取得したが,1989年の天安門事件に衝撃を受け,1990年に日本国籍を取得。1993年朝日賞受賞。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「陳舜臣」の解説

陳舜臣 ちん-しゅんしん

1924-2015 昭和後期-平成時代の小説家。
大正13年2月18日生まれ。昭和36年「枯草の根」で江戸川乱歩賞,44年「青玉獅子香炉」で直木賞,45年「玉嶺よふたたび」「孔雀(くじゃく)の道」で日本推理作家協会賞。中国の歴史ものに作域をひろげ,51年「敦煌(とんこう)の旅」で大仏次郎賞,平成4年「諸葛孔明」で吉川英治文学賞。7年芸術院賞,翌8年芸術院会員。平成27年1月21日死去。90歳。兵庫県出身。大阪外国語学校(現・大阪外大)卒。作品はほかに「阿片戦争」「琉球の風」など。

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