陳皮(読み)ちんぴ

精選版 日本国語大辞典 「陳皮」の意味・読み・例文・類語

ちん‐ぴ【陳皮】

〘名〙 生薬の一種。ミカンの黄熟した果皮で、芳香性で苦味がある。健胃鎮咳去痰剤として用いる。
※桂川地蔵記(1416)上「薬種総雖万端、今少々言之、先〈略〉虎胆、五味子、陳皮」
[語誌](1)生薬としての橘柚は「本草」木部上品に載せられ、その皮には解熱・鎮咳等の効能があり、「陳(ふる)い皮」の薬効が優れていると認められていた。日本では「重訂本草綱目啓蒙」で、まだ黄色く熟していない「青皮」と対比されている。
(2)「橘〈俗云蜜柑〉」〔和爾雅‐六〕とあるように、橘柚の品種改良に伴って「陳皮」の原料も廉価となり、最も使い易く安価な漢方薬とみなされていたことが、「下手医者は、陳皮甘草抔を集め候て病をいやし候半」〔徂来先生問答書‐中〕などの記述から知られる。
(3)「本草」に記されている健胃・鎮咳・除痰・発汗等の効能の他に、「ぢんのくすりとて、ちんひかんきょう」〔天理本狂言・煎物〕のように腎虚に効くという俗説もあった。

ちん‐ぴん【陳皮】

〘名〙 「ちんぴ(陳皮)」の変化した語。〔浮世鏡(1688)〕

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デジタル大辞泉 「陳皮」の意味・読み・例文・類語

ちん‐ぴ【陳皮】

ミカンの成熟した果皮。漢方で健胃・鎮嘔ちんおう鎮咳ちんがい薬などに用いる。橘皮きっぴ

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百科事典マイペディア 「陳皮」の意味・わかりやすい解説

陳皮【ちんぴ】

漢方薬。ウンシュウミカンの成熟果皮を乾燥したもの。成分リモネン,配糖体ヘスペリジンなどで,芳香性健胃・鎮咳(ちんがい)薬として用いる。果皮の新鮮なものを橘皮(きっぴ)と称して陳皮と区別することがあり,未熟果皮を乾燥したものは青皮という。
→関連項目五香粉反魂丹

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「陳皮」の意味・わかりやすい解説

陳皮
ちんぴ

温州(うんしゅう)ミカンの果皮を乾燥して粉にしたもの。橘皮(きっぴ)ともいう。柑橘(かんきつ)類の皮特有の芳香とテルペン特有の苦味がある。昔から漢方薬として利尿剤、咳(せき)止め薬として重用されてきたが、香辛料としては七味唐辛子の一成分に使われるほか、カレー粉にも混ぜられることがある。

[齋藤 浩]


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世界大百科事典(旧版)内の陳皮の言及

【かんきつ類(柑橘類)】より


[利用]
 古く,ローマではシトロンを衣服の虫よけ,煎じて解毒などの薬用にしている。中国でかんきつ類の果皮は陳皮として古くから薬用にされていた。日本でも古くから生薬として,凍傷,外傷,風邪,解熱,神経痛などに用いられてきた。…

【中国料理】より

…甘いデザートの味付けにも使う。 陳皮ミカンの皮を干したもの。肉と鳥の醬油煮に入れたり,五香粉の一味として使われる。…

※「陳皮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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