阿賀野川水銀事件(読み)あがのがわすいぎんじけん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「阿賀野川水銀事件」の意味・わかりやすい解説

阿賀野川水銀事件
あがのがわすいぎんじけん

1964年8月から約1年間,新潟県の阿賀野川下流沿岸で発生した有機水銀中毒事件。昭和電工鹿瀬工場 (当時) から,アセトアルデヒドの製造過程で使用される触媒の水銀が,メチル水銀化されて排出され,食物連鎖により濃縮されて川魚に蓄積,その川魚を大量に摂取した人に発生した。原因や症状が水俣病と同じで,水銀に脳がおかされて生じた視野狭窄,運動失調などの神経性疾患であるため,新潟水俣病,第2水俣病とも呼ばれる。被害者は 1980年3月まで死者 76人,認定患者 602人,認定申請中の者 109人。被害者は 1967年に昭和電工に対して損害賠償の訴訟を起こし,1971年9月勝訴の判決を得た。同裁判では,(1) 反論を加害者が立証できなければ,因果関係の立証は,蓋然性の推定ができれば成立すること,(2) 最高技術の設備があっても,被害が発生したかぎり過失は免れないこと,との論旨が述べられた。 1982年新潟水俣病を発生させた国の責任や,病気の認定基準をめぐって第2次訴訟が起こり,国,昭和電工と被害者の原告 234人との間で係争となったが,1996年に和解が成立した。

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