阿武郡(読み)あぶぐん

日本歴史地名大系 「阿武郡」の解説

阿武郡
あぶぐん

面積:九七〇・七四平方キロ
田万川たまがわ町・須佐すさ町・阿武あぶ町・むつみそん阿東あとう町・福栄村ふくえそん川上村かわかみそん旭村あさひそん

山口県の東北端に位置し、その東北は島根県、東南は佐波さば郡、南は山口市、西は美祢みね郡・萩市に接し、西北は日本海に面する。この海に臨む西北部以外の三方は五〇〇―一〇〇〇メートルほどの山岳に囲まれて、平地は少なく、山地を発し日本海に注ぐ河川がつくる沖積地や、谷間の平地に集落が点在する。

近海には宇田うた島・ひめ島・島・鹿島・おお島・ひつ島・島・島・島・あい島・島・さば島などの島嶼が散在するが、このうち大島・櫃島・尾島・羽島・相島・見島など以外は無人島で、近年になって羽島も無人島となった。

山陰・山陽の境界をなす中国山脈は阿武郡の東南端で北方に十種峰とくさがみね山脈を形成し、島根県との境をなす。主峰十種峰(徳佐ヶ峰、九八九・二メートル)は長門国第一の名山である。一方中国山脈は西南に延び、野道のどう(九二四・二メートル)津々良つづらヶ岳(七三二・八メートル)高羽たかばヶ岳(七六一メートル)物見ものみヶ岳(七四五・六メートル)竜門りゆうもん(六八八・四メートル)東鳳翩ひがしほうべん(七三四・二メートル)および西鳳翩山(七四一・九メートル)を形成、南北に分れて北脈は西北に延び、阿武郡の西境を区切る。この北脈をくじらたけ山脈というが、鯨ヶ岳(六一五・九メートル)はその主峰である。阿武郡の西北には火山脈があり、東は須佐のこう(五三二・八メートル)に起こり、日本海上を萩市域にかけて大島・櫃島・尾島・相島・肥島・羽島や、かさ山などを形成する。

郡の西北、日本海沿岸部は長く、多くの港湾を形成する。奈古なご(阿武町)は西・北の二方を陸に囲まれ、港内に男鹿おか島・女鹿めか島の二島があり、西北風をさえぎり、停泊に適している。東方に湾入した須佐港(須佐町)は、西北に(天神島)があり、江崎えさき(田万川町)も南方に深く湾入した良港である。

郡内の主要河川には阿武川・大井おおい川・田万川がある。阿武川は源を物見岳(六二六メートル)西麓に発し、萩市に至って日本海に注ぐ、全長八二キロ余、県下第二の大河である。大井川は阿武町福田ふくだに源を発し、西北に向かい、西南に転じ、さらに西流して萩市大井に至り日本海に注ぐ。流路約三二キロ。田万川は須佐町弥富やどみに源を発し、東に流れ、南より来る渓流を合わせて北に向かい、ほぼ十種峰山脈と平行して田万川町江崎に至り日本海に注ぐ。

「国造本紀」に「阿武国造」がみえるが、大井川下流一帯を基盤にしてその付近を支配したものと思われ、「日本書紀」景行天皇四年の条にみえる「阿牟君」(「日本後紀」弘仁二年三月条に「阿牟公人足」などがみえる)はその氏族名といわれる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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