阿吽・阿呍(読み)あうん

精選版 日本国語大辞典 「阿吽・阿呍」の意味・読み・例文・類語

あ‐うん【阿吽・阿呍】

〘名〙 (a-hūṃ の音訳)
① 仏語。密教の言語観で、阿は悉曇(しったん)一二母音の初音で開口音。吽は終わりで閉口音。密教ではこの二字をもって法界万有を摂し、阿は一切が発生する理体、吽は一切の終結する智徳を表わすとし、また菩提心と涅槃などを表わすとする。
謡曲・安宅(1516頃)「出で入る息に阿吽の二字を唱へ、即身即仏の山伏を」
② 吐く息と吸う息。呼吸の出入り。あうんの呼吸。
※浄瑠璃・心中万年草(1710)下「あうんの息もきへきへと、のっつ返しつ苦しむ声(こゑ)
③ 寺院山門の仁王狛犬(こまいぬ)などの一対。一は口を開き、一は口を閉じる。→阿吽の二王
相対対比対立など相対する二つのものにいう語。
※浄瑠璃・卯月の紅葉(1706頃)上「物にはあうん有故に、道具中間(なかま)のあきなひに、そんもする又とくも取」
⑤ 息をつめたり、掛け声をかけたりして、全身の力をこめる形容
河東節・帯曳おとこ結(1723)「やってはひかへ、引てはゆるめ、げに鉄(くろがね)のくさりにて、大象をひくちから声、両方あうんの力わざ、いきをもつがず、もみあひしが」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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