阿古屋(読み)アコヤ

デジタル大辞泉 「阿古屋」の意味・読み・例文・類語

あこや【阿古屋】[人名]

平景清たいらのかげきよの愛人。京都五条坂の遊女で、近松門左衛門作「出世景清」や文耕堂長谷川千四合作壇浦兜軍記だんのうらかぶとぐんき」などに登場する。

あこや【阿古屋】

愛知県半田市付近、知多半島東海岸の古地名。
山形市郊外の千歳ちとせ山の古称。山上の松が有名であった。

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精選版 日本国語大辞典 「阿古屋」の意味・読み・例文・類語

あこや【阿古屋】

[1] 〘名〙
山家集(12C後)下「あこやとるいがひの殻を積みおきて宝の跡を見するなりけり」
② 米の粉でつくった、小さなだんごの一種。「あこやだま」の形をしているので、この名がついたという。あこやもち
言継卿記‐大永七年(1527)三月二一日「あこやにて酒をすすめ候」
[2]
[一] 愛知県半田市付近の古名。
[二] 山形市南東部にある千歳山の古い呼び名。ここに生える老松が有名であった。また阿古屋姫の伝説で、歌枕として使われている。阿古耶
平家(13C前)二「みちのくのあこ屋の松に木がくれていづべき月のいでもやらぬか、といふ歌の心をもて、当国の名所あこ屋の松とは仰せられ候か」
[三] 平景清の寵を受けた京都五条坂の遊女。近松門左衛門作「出世景清」や文耕堂・長谷川千四合作「壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)」などに登場する。特に後者の三段目琴責めの場は有名。

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改訂新版 世界大百科事典 「阿古屋」の意味・わかりやすい解説

阿古屋 (あこや)

近松門左衛門作《出世景清》,文耕堂・長谷川千四合作《壇浦兜軍記》などに登場する清水坂の遊女で,景清の愛人。幸若・古浄瑠璃《景清》では〈あこ王〉とある。あこ王は景清との間に2人の子まであるが,平家の残党となった夫の行末を不安に思い,子どものためにあえて訴人に出る。景清は子どもを殺害して遁走するが,あこ王は,その不義ゆえに頼朝によって川に柴(ふし)漬けにされる。《出世景清》では,阿古屋は,景清の正妻熱田大宮司娘への嫉妬から,兄十蔵の勧めをいれて密告する。大宮司と娘が捕らえられ,それを知った景清が自首すると,阿古屋は六波羅の獄舎を訪ねて謝罪するが,夫の怒りがとけず,その場でわが子を手にかけて自害する。しかし《壇浦兜軍記》では,阿古屋と十蔵の兄妹は,景清にたいしてひたすら献身的である。十蔵は景清の身代りになろうとし,また阿古屋は捕らえられて景清の居所をきかれるが白状せず,畠山重忠は阿古屋に琴・三味線胡弓をひかせ,その音色から景清の所在を知らぬとして釈放する(〈阿古屋琴責〉の段)。柳田国男は,アコを〈我子〉つまり神子(みこ)の意味とし,巫女の通り名が物語のヒロインになる数多い例の一つと考えている。
平景清
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「阿古屋」の意味・わかりやすい解説

阿古屋
あこや

義太夫節の曲名。文耕堂らの合作で,享保 17 (1732) 年竹本座初演の時代物『壇浦兜軍記』の3段目。平家の残党を詮議する京都堀川の評定所で,岩永左衛門は平景清の愛人阿古屋を拷問して,景清のゆくえを白状させようとするが,畠山重忠は阿古屋に琴,三味線,胡弓を弾かせ,その音色に乱れがないことから,彼女の心に偽りはないとして許す。人形に三曲を弾かせる趣向がおもしろく,華美な曲。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「阿古屋」の解説

阿古屋 あこや

浄瑠璃(じょうるり)「出世景清(しゅっせかげきよ)」などに登場する女性。
京都清水坂の遊女で,源頼朝をねらう平家の残党平景清の子を生む。近松門左衛門作「出世景清」では,正妻への嫉妬(しっと)から景清をうったえる。景清の怒りが解けないため子とともに自害する。文耕堂・長谷川千四合作「壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)」では,捕らえられても景清の居場所を白状しない献身的な女性にえがかれている。あこ王とも。

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「阿古屋」の解説

あこや【阿古屋】

ひちぎり。◇餅(もち)に丸めたあんをのせた形を、真珠を抱くあこや貝(真珠貝)に見立ててこの名がある。「あこや餅」ともいう。⇒ひちぎり

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「阿古屋」の解説

阿古屋
(通称)
あこや

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
檀浦兜軍記
初演
享保17.9(京・万太夫座)

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世界大百科事典(旧版)内の阿古屋の言及

【出世景清】より

…また源平合戦の武将たちの五百年忌にも当たり,〈八島〉や〈景清〉の世界が選ばれた。平家の落武者景清の頼朝への復讐(当面じゃま者畠山重忠をつけねらう)を縦筋に,閉塞状況の中で彼をかばう小野姫と,2人の子をもうけながら嫉妬の愛憎を利用した敵役兄十蔵の教唆で心ならずも裏切る阿古屋という,2人の対照的な女性の話を横筋として絡ませながら,入牢,阿古屋と2児の死,仏の身代り,頼朝への降伏,瞋恚(しんい)の炎をみずから消すため目をくりぬくという悲愴感に溢れ変化に富んだ展開を見せる。本作は近松と義太夫の提携第1作という意味でも,その優れた悲劇性に対する近代の評価も加わって,浄瑠璃史上,古浄瑠璃と一線を画する作という位置付けを得ている。…

※「阿古屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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