防皺加工(読み)ぼうしわかこう

改訂新版 世界大百科事典 「防皺加工」の意味・わかりやすい解説

防皺加工 (ぼうしわかこう)
anti-crease finish
crease proofing

布にしわがよりにくくなるようにする加工をいい,かつて,防しゅう(皺)加工ともいわれた。主として,綿やレーヨンなどのセルロース織物ニットを対象としている。歴史的には,イギリスのトータル・ブロードハースト・リーTootal Broadhurst Lee社が1926年に発表した。セルロース織物を尿素ホルムアルデヒド樹脂(初期縮合物)で処理する防しわ加工特許に始まるものであり,日本では当初,レーヨンスフ織物の耐水強度の向上と着用時のしわの発生の防止を目的として工業化された。その後,ジメチロールエチレン尿素などのセルロースの架橋剤型の加工剤(リアクタント型樹脂)が開発され,綿布の防しわ加工が盛んとなった。さらに,洗濯により発生するしわをとるためのアイロン掛けを軽減化することを目的として,乾燥時のみならず湿潤時においても防しわ性を向上させるウォッシュ・アンド・ウェア加工が始まった。しかし,ウォッシュ・アンド・ウェア性に優れたポリエステル綿混織物の普及につれ,ウォッシュ・アンド・ウェア加工は一部のものを除いてすたれた。その後,より優れたウォッシュ・アンド・ウェア性をもち,洗濯に耐えられるプレスひだを与えるパーマネントプレス加工が始まった。加工したものは汚れが取れにくく,また,風合いが硬くなりがちなため,SR加工や柔軟加工と併用することが多い。日本では1975年に健康上の理由から遊離ホルムアルデヒドの規制が始まり,非ホルマリン系の加工剤の開発が望まれている。
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防皺加工 (ぼうしゅうかこう)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「防皺加工」の意味・わかりやすい解説

防皺加工
ぼうしわかこう

織物などをしわになりにくくする加工。織物に生ずるしわは、織物の組織、糸の形状繊維の種類などによって違っているが、防皺加工は、しわになったとき、繊維の折り曲げられたときにもつひずみから弾性回復させることを向上することにある。そのため繊維内部に樹脂を充填(じゅうてん)結合させるか、繊維を構成する分子間に化学的に架橋結合する方法がとられる。工程は、樹脂液を飽充させたのち乾燥し、高熱処理をしてから、洗浄・乾燥・仕上げをする。この処理をしたものは、しわの回復性、触感などの点では著しく向上するが、引裂強さや摩擦抵抗性などは低下する欠点がある。最近では、ウォッシュ・アンド・ウエア加工、さらに恒久ひだ付け加工を加えたパーマネント・プレス加工などが開発され、実用化されている。

[角山幸洋]

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百科事典マイペディア 「防皺加工」の意味・わかりやすい解説

防皺加工【ぼうしわかこう】

織物にしわになりにくい性質を与える加工。防皺(ぼうしゅう)加工とも。麻・綿・スフ織物などでは尿素樹脂メラミン樹脂などによる樹脂加工を行うのが普通。毛織物では熱湯,蒸気で処理する煮充により防皺性を与え得る。

防皺加工【ぼうしゅうかこう】

防皺(ぼうしわ)加工

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世界大百科事典(旧版)内の防皺加工の言及

【防しわ加工(防皺加工)】より

…布にしわがよりにくくなるようにする加工をいい,かつて,防しゅう(皺)加工ともいわれた。主として,綿やレーヨンなどのセルロース織物やニットを対象としている。歴史的には,イギリスのトータル・ブロードハースト・リーTootal Broadhurst Lee社が1926年に発表した。セルロース織物を尿素ホルムアルデヒド樹脂(初期縮合物)で処理する防しわ加工の特許に始まるものであり,日本では当初,レーヨンスフ織物の耐水強度の向上と着用時のしわの発生の防止を目的として工業化された。…

【樹脂加工】より

…広義には,布や紙などを合成樹脂あるいはその原料モノマー(単量体)や初期縮合物を用いて加工し,繊維内,繊維表面あるいは繊維間に樹脂を分布させたり,繊維内部で繊維の官能基と反応させて架橋構造を形成させることにより,布や紙の性質,風合いなどを改良する加工すべてをいう。たとえば,合成繊維の表面に耐熱性のある樹脂の被膜をつくることにより,タバコの火に短時間耐えられるようにする防融加工も樹脂加工の一種である。狭義には,レーヨンや綿のようなセルロースの布の防しわ性や耐水性を改良する加工をいう。…

※「防皺加工」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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