闌曲(読み)ランギョク

デジタル大辞泉 「闌曲」の意味・読み・例文・類語

らん‐ぎょく【×闌曲/×蘭曲/乱曲】

能における音曲の曲趣で、世阿弥が五つに分類した五音ごおんの一。けたるくらいの音曲。他の祝言幽曲恋慕哀傷のすべてにわたり、かつ、それを超越した最高の曲風
謡曲一節で、謡い手の技法を聞かせるのにふさわしい部分を、独吟にするために独立させた曲。番外曲廃曲クセを中心とした部分が多い。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「闌曲」の意味・わかりやすい解説

闌曲 (らんぎょく)

能の用語。蘭曲,乱曲とも書き,流派によって曲舞(くせまい)ともいう。古くは祝言,幽玄,恋慕,哀傷とともに五音曲の一つを示していた。五音曲は謡の分類用語で,他の四つが情趣の区別による分類であるのに対し,闌曲はそれらを超越した自由な謡い方を意味した。のちに,そうした謡いどころのある曲のうち,上演のまれな曲だけを集めるようになり,それらを闌曲と呼ぶようになった。流派によって曲舞と呼ぶのは,これらの曲がサシクセから成るものが多いためである。謡い物として各流派に伝承されてきたために,古いフシが残っていたり,細部技巧が発達したりしている面がある。闌曲は独吟(どくぎん)が原則だが,観世流小鼓には,闌曲の譜としてシテ方観世流の相手をする一調(いつちよう)の譜があるという。現行の闌曲は62曲で,17曲は現在も能として上演されている曲の一節(《花筐(はながたみ)》など)であり,45曲は《松浦物狂》や《横山》《舞車》のように,能としては上演されなくなった曲か,《東国下》や《西国下》のように最初から謡い物として作られた曲である。いずれも,最高の芸位と技巧を必要とする謡い物である。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「闌曲」の意味・わかりやすい解説

闌曲【らんぎょく】

能の用語。蘭曲,乱曲とも。多くクセの部分の詞章を用いるので曲舞(くせまい)と呼ぶ流儀もある。世阿弥が最高の芸位とする〈闌(た)けた〉曲のことで,自在なうたい方を生命とし,独吟としてまれに上演される。《初瀬六代》《東国下(くだり)》《西国下》を特に重んじて三曲という。
→関連項目曲舞

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「闌曲」の意味・わかりやすい解説

闌曲
らんぎょく

能楽用語。「蘭曲」「乱曲」とも書く。多くクセの部分をうたうところから,流派により曲舞 (くせまい) ともいう。闌 (た) けたる曲の意で,謡で最高とされる境地,高度な特殊な謡物をさす。おもに独吟で囃子,舞を伴わない。重習 (おもならい) で,ワキ方も含め約 60曲を伝える。 (→習物 )

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android