関船(読み)せきぶね

精選版 日本国語大辞典 「関船」の意味・読み・例文・類語

せき‐ぶね【関船】

〘名〙 室町時代瀬戸内海の主要航路上の港湾を中心に設けられた海関所属の船から転じて、戦国時代から江戸時代にかけて使われた軍船の船型の呼称。安宅船(あたけぶね)より小型で軽快な行動力をもつ快速船で、周囲に防御装甲をもつ矢倉を設け、適宜、弓・鉄砲狭間(はざま)をあける。安宅船とともに水軍の中心勢力を形成し、慶長一四年(一六〇九)安宅船が禁止されてからは諸藩の水軍の基幹勢力となった。一般に櫓四〇挺立内外のものを中関(なかぜき)と称し、大型のものは八〇挺立前後におよび、諸大名の御座船に使用された。徳川家光が建造した天地丸七六挺立はその代表的なもの。早船ともいい、小型のものを小関船または小早という。〔大内氏掟書‐一〇八~一一五条後書・文明一九年(1487)四月二〇日〕

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デジタル大辞泉 「関船」の意味・読み・例文・類語

せき‐ぶね【関船】

戦国時代から江戸時代に使われた軍船。小型で速く、周囲に矢倉狭間はざまなどを設けたもの。早船。

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改訂新版 世界大百科事典 「関船」の意味・わかりやすい解説

関船 (せきぶね)

この呼称は,〈海賊〉なるものが日本にも出没し始めた10世紀前後(平安中期)から用いられていたと思われる。瀬戸内豊後水道など海路要衝をおさえた彼らは,航行する一般船舶から〈関銭(せきせん)〉,すなわち通航料を徴収して航路の保障と住民の保護に任じていたことは周知のとおりであるが,そのために用いられた船がこの名の起りであろう。以後,関船の実体は,時代とともに3度大きく変遷する。

 まず第1期は14世紀末の南北朝時代のころまでであり,関船独自の船型はまだ存在せず,一般の漁船など小型船のうち船足の速い軽快なものを徴用していたようである。第2期は15~16世紀の室町末期,いわゆる戦国時代で,ようやく,専用軍船としての関船が登場する。このころ初めて現れるとがった船首材(ミヨシ)を備え,青竹のすだれなどで軽量の防備を施した本格的中型構造船であり,水軍船隊の巡洋艦的役割を果たす。第3期は江戸時代であり,泰平の世となるや幕命により即刻没収焼却された主力艦安宅船(あたけぷね)とは異なり,依然保有を許された巡洋艦関船は,惣漆(そううるし),金泥(きんでい),金金具(きんかなぐ)などで美々しく装われ,将軍,大名の海上巡幸や参勤交代時の専用御召船,すなわち〈御座船(ござぶね)〉へと,華麗なる変身を遂げる。なお,関船は早船(はやふね)(小型のものは小早(こばや))とも呼ばれる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「関船」の意味・わかりやすい解説

関船
せきぶね

(1) 室町時代,瀬戸内海を中心に,大名,寺社,海賊などによって設けられた海の関所に配置された監視用の軽快な船。 (2) 戦国時代以来,水軍で主用された快速の中型の軍船で,主力艦の安宅船 (あたけぶね) とともに水軍の中心勢力を形成した。櫓走を主とするため,40~50丁の櫓を装備する全長 18~23m程度のものが多かったが,江戸幕府による安宅船の所有禁止後は水軍の主力となり,諸大名の御座船として 70~80丁立て,全長 32~36m級の大型船も建造された。特に中国筋,四国,九州の諸大名は,参勤交代の際,領国から大坂までの海路に御座船と多数の関船による大船団を組んで往来した。

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世界大百科事典(旧版)内の関船の言及

【和船】より

…現存史料による限り,〈百済船(くだらぶね)〉〈唐船(からふね)〉〈宋船〉〈暹羅船(シヤムせん)〉〈南蛮船〉などの対語としての〈倭船〉ないし〈和船〉なる文字は,少なくとも幕末前には見当たらない。では,日本の船のことは何と記しているかというと,〈遣唐使船〉〈遣明船〉〈朱印船〉〈安宅船(あたけぶね)〉,〈関船(せきぶね)〉(のち船型呼称となる),〈御座船〉〈荷船〉〈樽廻船〉〈くらわんか舟〉など用途による名称,〈茶屋船〉〈末吉船〉〈末次船〉〈荒木船〉など所有者名を冠するもの,〈伊勢船〉〈北国船(ほつこくぶね)〉〈北前船(きたまえぶね)〉〈高瀬舟〉など,地名を冠してはいるが実は船型を表すもの,〈二形船(ふたなりぶね)〉,〈ベザイ船〉(弁財船とも書かれる),〈菱垣廻船〉〈早船(小型のものは小早(こばや))〉など船型や艤装(ぎそう)を指す呼称,〈千石船〉(ベザイ船の俗称),〈三十石船〉など本来船の大きさ(積石数(つみこくすう)。現用の載貨重量トン)を表した呼称が船型名称のごとく使われるようになったものなど,個々の船種船型名称が記されているのが一般である。…

※「関船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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