ちょう‐・ずる チャウ‥【長】
[1] 〘自サ変〙 ちゃう・ず 〘自サ変〙
① しだいに成長する。育つ。生い立つ。
※今昔(1120頃か)二六「抑(そもそも)前に参りし夜産れ給し人は、今は長(ちゃう)じ給む」
② 他よりぬき出てすぐれる。巧みになる。まさる。
※今昔(1120頃か)六「其の男子、漸く勢(せい)、長(ちゃう)じて、名をば鳩摩羅什と云」
③ 熱中し耽溺(たんでき)する。ふける。多くあまり好ましくない物事についていう。
※義経記(室町中か)五「酒に長じたる男にて」
④ 年上である。年長である。
※
太平記(14C後)五「其の中二年長せるを先達に作り立て」
⑤ しだいにたけなわになる。程度、度合がはなはだしくなる。増長する。
※史記抄(1477)二〇「最初はちっとしたる事なれども、長して大事になるものぞ」
[2] 〘他サ変〙 ちゃう・ず 〘他サ変〙
① しだいに成長させる。育てる。
※今昔(1120頃か)九「此、偏に、鶏の卵を焼き噉て不長(ちゃうぜしめ)ざる罪也と知ぬ」
② すぐれたものにする。進歩させる。発展させる。
※舞姫(1890)〈森鴎外〉「我学問は荒みぬ。されど余は別に一種の見識を長じき」
③ 物の程度や度合をしだいに甚だしくする。増長させる。
※経国美談(1883‐84)〈矢野龍渓〉後「空想の利を興こすに在る者は其挙必ず禍乱を長ず」
ちょう チャウ【長】
[1] 〘名〙
① 多数の人の上に立つ人。かしらだつ人。多くのなかで、もっとも主だった人。かしら。おさ。長者。
※将門記(940頃)「苟くも良兼、彼の姻婭の長と為りたり」 〔易経‐乾卦・文言伝〕
② 長子。長男。総領。
③ としうえ。としかさ。年長。また、めうえ。
※勝鬘経義疏(611)十大受章「三処為レ尊。兄秩為レ長」 〔礼記‐祭義〕
④ ながいこと。ながいもの。また、長さ。
※幻雲文集(1533頃)鶴翁字銘「其箭長而大、森々如レ矛」 〔管子‐乗馬〕
⑤ (形動) すぐれていること。まさっていること。また、そのさま。長所。
※正法眼蔵(1231‐53)仏性「しかあれども、一切衆生無仏性のみ仏道に長なり」 〔戦国策‐斉策・宣王〕
※古今連談集(1444‐48頃)上「順覚七句に長、信照七句承りぬ」
※万葉(8C後)五・八九七・題詞「老身重病経レ年辛苦及思二児等一歌七首〈長一首短六首〉」
⑧ (形動) (「
ぞうちょう(増長)」の略か) つけあがること。生意気なこと。また、そのさま。無礼。
※浄瑠璃・関取千両幟(1767)六「余所の可愛い色事咄、錦主も長(チャウ)であろ」
[2] 長門国の略。「薩長」
おさ をさ【長】
〘名〙
① 多数の人の上に立ち、それを統率し、または支配する人。頭(かしら)。首長。ちょう。
※書紀(720)大化二年正月(北野本訓)「凡そ京(みさと)には坊(まち)毎に長(ヲサ)一人を置け」
② 多くのなかで最もすぐれているもの。また、その人。
※大鏡(12C前)五「みかど、東宮をはなちたてまつりては、これこそ孫のおさとて、やがて御童名を長君とつけたてまつらせ給ふ」
③ 博徒や犯罪者のかしら。親分。〔国民百科新語辞典(1934)〕
ちょう・じる チャウじる【長】
〘自ザ上一〙 (サ変動詞「ちょうずる(長)」の上一段化したもの) =
ちょうずる(長)※太平記(14C後)一「
志学の才の始より、六義の道に長しさせ給へり」
なが‐ま・る【長】
〘自ラ四〙
① 長くなる。伸びる。
② 長々とからだを伸ばして横になる。からだを伸ばして寝る。
※桑の実(1913)〈鈴木三重吉〉五「蔓の寝椅子に長まって」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「長」の意味・読み・例文・類語
つかさ【▽長/▽首】
1 主要な人物。首長。おさ。
「宮の―は、すなはち脚摩乳、手摩乳なり」〈神代紀・上〉
2 主要なもの。
「古よ今の現に万調奉る―と作りたるその生業を」〈万・四一二二〉
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長
ながとろ
現長瀞町から皆野町にかけての荒川中流の峡谷で、一般に皆野町親鼻橋から下流の長瀞町高砂橋までの約四キロ間をいう。左岸は平坦な結晶片岩が露出して岩畳とよばれ、対岸の断層の岩壁は秩父赤壁とよばれている。地質学上も貴重であることから大正一三年(一九二四)に国の名勝・天然記念物に指定された。また昭和二六年(一九五一)には県立長瀞玉淀自然公園の一部として指定され、県下でも有数の観光地として賑わっている。例年八月一五日の夜に岩畳と荒川で船玉祭が行われている。
江戸時代の秩父地方を記した地誌などには取上げられることが少なくない。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
世界大百科事典内の長の言及
【翁猿楽】より
…翁猿楽に戯曲的な筋はほとんどなく,全体が一種の儀式とみられるが,鎌倉末期まではこれが猿楽の芸の主体をなすものであった。ために,猿楽の座は翁猿楽を演ずることを職能とし,〈長(おさ)〉と呼ばれる翁役専門の長老役者とそのグループの人達だけで翁を演ずるならわしであった。翁猿楽が鎌倉中期にその形態を整えていたことは確実で,翁猿楽の最古の記録《弘安六年春日臨時祭記》(1283)は,祭礼の行列に参加した〈猿楽〉として〈児(ちご)・翁面・三番猿楽・冠者(かじや)・父允(ちちのじよう)〉の役々と,それを担当した僧の名前をあげている。…
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出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報