出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
埼玉県北西部,秩父郡長瀞町にある荒川中流の渓谷。親鼻橋から下流高砂橋まで約4kmにわたって板状節理の三波川(さんばがわ)系結晶片岩が露出し,左岸には岩石段丘,右岸には秩父赤壁と呼ばれる断層崖が発達する。石畳とも呼ばれる段丘面には広域変成作用による石墨片岩,緑泥片岩,紅レン片岩などがみられ,また河床には甌穴(おうけつ),白鳥島には横臥褶曲があるなど地質学上貴重であり,国の名勝・天然記念物に指定されている。桜や紅葉の名所で舟下りも行われ,長瀞玉淀県立自然公園の中心をなしている。上長瀞の県立自然史博物館(現,県立自然の博物館)には秩父地方の鉱物や動植物の標本が展示され,小・中学生の課外教育にも利用されている。西方の宝登(ほど)山とともにハイキングコースとなっている。秩父鉄道長瀞駅下車。
執筆者:新井 寿郎
埼玉県北西部,秩父郡の町。人口7908(2010)。秩父盆地北東端にあり,荒川沿いの河岸段丘に集落が位置する。野上町と称したが,1972年名勝・天然記念物の長瀞にちなんで改称。中心集落の野上は江戸時代,六斎市が開かれ,絹織物,タバコ,大豆などの取引が行われた。1911年熊谷から上武鉄道(現,秩父鉄道)が通じ,秩父の玄関口となった。長瀞玉淀県立自然公園の中心的な観光・行楽地で,長瀞を一望できる宝登(ほど)山(497m)にはロープウェーが設けられ,県立自然史博物館(現,県立自然の博物館),長瀞総合博物館などがある。日本一の大きさといわれる野上下郷石塔婆(史),秩父地方の板ぶき農家の代表的遺構である旧新井家住宅(重要文化財)がある。
執筆者:千葉 立也
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…荒川は上流で中津川を合わせた後,数段の河岸段丘が発達する秩父盆地に入り,皆野町で赤平川を合流する。皆野より寄居までは結晶片岩に掘り込まれた狭い谷底を流れ,長瀞の景勝地をつくる。寄居から熊谷までが荒川の中流で,そこに寄居町を扇頂とする荒川扇状地を展開し,扇状地上には幾条もの古い流路跡が見いだされる。…
…甌穴が成長するにつれて深さも増すので,とびこんだ石も丸みを増し,穴の外へ出られなくなる。日本では花コウ岩の河床上に発達した木曾川の寝覚(ねざめ)ノ床の甌穴,片岩類の河床上に発達した荒川の長瀞(ながとろ)などが有名である。海岸にできる甌穴は海食甌穴とよぶこともある。…
※「長瀞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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