長崎[県](読み)ながさき

百科事典マイペディア 「長崎[県]」の意味・わかりやすい解説

長崎[県]【ながさき】

九州西部の県。壱岐対馬五島列島を含む。県庁所在地は長崎市。4132.09km2。142万6779人(2010)。〔沿革〕 かつての肥前国西半部と壱岐島対馬島にあたり,古来,大陸との交渉が深く,特に長崎は鎖国時代の日本唯一の外国への門戸として,ポルトガル人やオランダ人によって大陸・南方物資がもたらされ,キリシタン伝道の中心となった。江戸時代には天領長崎に奉行が置かれ,他は島原大村平戸福江厳原(いずはら)などの諸藩に属した。1869年長崎が長崎県となり,1871年厳原を除く4藩がそれぞれ県となり長崎県と合併,1872年対馬を合併,1893年壱岐を合わせ現県域となる。〔自然〕 主部は九州西部の大半島で,さらに東部の島原半島,南部の長崎半島,西部の西彼杵(にしそのぎ)半島,北部の北松浦半島に分かれる。雲仙火山群と多良岳以外に標高1000mを超える山はなく,大部分が低い山地と台地で占められる。平野に乏しく,本明(ほんみょう)川下流の諫早(いさはや)平野が最大。島部は壱岐,対馬,五島列島,平戸島ほか600余の小島からなる。海岸は大部分が沈降海岸屈曲が著しく,海岸線は延長3700kmに及ぶ。温暖多雨の海洋性気候で,亜熱帯植物もみられる。台風や梅雨末期の豪雨による被害が多い。〔産業〕 産業別人口構成は第1次9.1%,第2次20.7%,第3次69.7%(2005)。耕地は県面積のわずか12.6%で,しかも傾斜地が多い。水田は諫早平野以外では,藩政時代以来干拓されてきた有明海沿岸が主で,全耕地の約49%。農業粗生産額では畜産,野菜,米,果樹の順で,米の比率が低い。茂木を中心としたビワは全国第1位,島原半島などのジャガイモは同1位,ミカン同5位の生産量がある。ほかには平戸,五島などの肉牛飼育,シイタケ栽培も盛ん。漁場良港に富み,漁業県として知られる。漁獲量は北海道につぎ第2位。東シナ海黄海の以西底引網,五島近海〜朝鮮海峡の巻網が中心で,アジ,サバ,カツオ,マグロ,定置網のブリ,一本釣のイカなどを漁獲。大村湾などのタイ,ブリ,真珠養殖も盛んで,有明海ではノリ養殖も行われる。鉱業では県北の佐世保炭田,県南の西彼杵炭田に属する諸炭鉱があったが,不況による廃鉱が相次いだ。対馬の対州鉱山は鉛,亜鉛を産したが1973年閉山。製造工業の中心は造船・機械・金属・食品工業であるが,県工業の中核であった長崎・佐世保両市の造船業は1970年代以降後退した。近年は諫早・大村両市に半導体部品工場が進出するなど,高速交通網の整備に伴い先端技術産業の立地が進んでいる。他にミカンかん詰,水産加工(するめ,煮干,からすみ),農産加工(デンプン,アルコール),長崎市のべっこう細工がある。雲仙天草国立公園西海国立公園の2国立公園,壱岐対馬国定公園があり,変化に富む海岸と多島海の光景がすぐれる。長崎,平戸,島原をはじめ各地にキリシタン遺跡や南蛮紅毛文化の史跡があり,特に長崎市には大浦天主堂,グラバー邸,崇福(そうふく)寺,浦上の平和公園,テーマパーク〈ハウステンボス〉などの名所,おくんち,ペーロンなど行事が多い。〔交通〕 主部は長崎市を終点とする長崎本線と長崎自動車道,国道34号線が幹線で,佐世保市,平戸市など県北に佐世保線,松浦鉄道,西九州自動車道,国道204,206号線,大村湾岸に大村線,島原半島に島原鉄道などが通じる。島部へは長崎,佐世保,平戸各港から船便がある。大村市に長崎空港があるほか,福江・壱岐・対馬・上五島・小値賀空港があり,離島空路も発達する。
→関連項目九州地方

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