鏡物(読み)かがみもの

精選版 日本国語大辞典 「鏡物」の意味・読み・例文・類語

かがみ‐もの【鏡物】

〘名〙 「鏡」の字が作品名の下につく歴史物語総称。「大鏡」「今鏡」「水鏡」「増鏡」など。鏡。鏡類。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「鏡物」の意味・読み・例文・類語

かがみ‐もの【鏡物】

書名に「鏡」のつく、和文の歴史物語の総称。「大鏡」「今鏡」「水鏡」「増鏡」など。鏡類。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鏡物」の意味・わかりやすい解説

鏡物
かがみもの

歴史物語のなかで、『大鏡(おおかがみ)』の創始した問答座談形式の歴史叙述を用いたもの。『大鏡』『水鏡』『増鏡(ますかがみ)』を三鏡(さんきょう)とよび、これに『今鏡』を加えて四鏡(しきょう)ともいう。『秋津島(あきつしま)物語』『月の行方(ゆくえ)』『池の藻屑(もくず)』などは体裁だけ模倣した擬古的な作品である。これらの作品では、まず序文語り手と聞き手を設定し、それらの人々の問答、座談によって物語が展開し、作者はかたわらでそれを観察しながら筆録する体裁になっている。とくに『大鏡』は、この問答、座談形式が首尾一貫し、歴史の表裏明暗を多角的にとらえて、歴史の真実を照らし出すのに効果をあげているが、『今鏡』『水鏡』は形式的で、問答、座談形式の機能が十分に生かされず、『増鏡』は形式的にも不完全である。

 なお、作品名に共通の「鏡」の語は、『今鏡』では亀鏡(きけい)の意で、歴史を鑑戒(かんかい)の資となす考えがうかがえるが、それ以外の作品では、真正なものを映し出す明鏡の意である。

竹鼻 績]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鏡物」の意味・わかりやすい解説

鏡物
かがみもの

『大鏡』『今鏡』『水鏡』『増鏡』など「鏡」を書名にもつ歴史物語をいう。「鏡物類」ともいう。老人昔物語という体裁で,史実を述べ,間に感想批判をはさんでいる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の鏡物の言及

【大鏡】より

…平安朝後期成立の歴史物語。文徳天皇の代から後一条天皇の代まで(850‐1025)のことを,かなぶみで書いており,いわゆる鏡物(かがみもの)の第1作。作者不詳。…

※「鏡物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android