精選版 日本国語大辞典 「鎮・静」の意味・読み・例文・類語
しずま・る しづまる【鎮・静】
〘自ラ五(四)〙
① 乱れたり、騒いだりしていたものが、静かな状態になる。おさまる。
(イ) 乱れや騒ぎが落ち着く。平穏になる。
※書紀(720)崇神七年一一月(北野本訓)「国の内漸(やうやく)謐(シツマリ)」
※源氏(1001‐14頃)薄雲「御わざなども過ぎて、ことどもしつまりて」
(ロ) 激しい風、雨、波などがおだやかになる。
※源氏(1001‐14頃)明石「いかづちのしづまらぬことは侍らざりき」
(ハ) 物音、声などが、やんだり、静かな調子になったりする。
※源氏(1001‐14頃)葵「すこし御声もしつまり給へれば」
(ニ) 浮かれたり乱れたりした気持が落ち着く。
※観智院本三宝絵(984)上「其の心不閑まらずして、その覚り難照き事」
※源氏(1001‐14頃)葵「一ふしにおぼしうかれにし心、しづまりがたうおぼさるるけにや」
② (あたりが静かになる意から) あたりの人々が寝入る。
※落窪(10C後)二「皆人々しづまりぬるをりに」
③ 神が、ある場所を自分の地としてそこにとどまる。鎮座する。
④ 勢力が衰える。
※源氏(1001‐14頃)野分「そこら所せかりし御いきほひのしづまりて」
※源氏(1001‐14頃)夕霧「人がらのいたうしづまりて、ものをいたうおもひとどめたりし心に」
※源氏(1001‐14頃)御法「心深げにしづまりたる御物語ども」
しず・める しづめる【鎮・静】
〘他マ下一〙 しづ・む 〘他マ下二〙 (「沈める」と同語源)
① 乱れや騒ぎをおさめる。また、天下を治める。
※東大寺諷誦文平安初期点(830頃)「惑ひの塵を寂(シヅ)むる甘露雨」
※平家(13C前)二「山門の騒動をしづめられんがために」
② 物音や声などを低くさせる。静かにさせる。
※源氏(1001‐14頃)葵「加持の僧ども声しづめて法華経をよみたる、いみじう尊し」
③ 浮かれたり乱れたりしている気持を落ち着かせる。平静にする。
※万葉(8C後)五・八一三「韓国(からくに)を むけ平げて 御心を 斯豆迷(シヅメ)給ふと」
※浄瑠璃・凱陣八島(1685頃)四「いやまづしづめて聞給へ」
④ 皆が寝入ってあたりが静かになるようにする。
※伊勢物語(10C前)六九「女、人をしづめて〈略〉男のもとに来たりけり」
⑤ 荒ぶる神霊などの活動を落ち着かせる。また、神を鎮座させる。
しずまり しづまり【鎮・静】
〘名〙 (動詞「しずまる(鎮)」の連用形の名詞化)
①
(イ) 乱れていたものがしずまること。また、しずめとなるもの。
※書紀(720)顕宗即位前(図書寮本訓)「築立つる 柱は、此の家長(いへのきみ)の御心の鎮(シツマリ)なり」
(ロ) 物音や声などがやんで、ひっそりすること。
(ハ) おだやかで落ち着いていること。また、そのもの。
※面影(1969)〈芝木好子〉一「いつもはげしく生きた彼女の、内側の静まりや女らしさを」
② 寝ることをいう女房詞。
※言国卿記‐文明八年(1476)七月二一日「女中御酒被下也。御しつまり以後なり」
しず・む しづむ【鎮・静】
[1] 〘自マ四〙 物音などが静かになる。声や音が低く小さくなる。また、火の勢がおさまる。しずまる。
※万葉(8C後)四・五〇三「珠衣(たまぎぬ)のさゐさゐ沈(しづみ)家の妹にもの言はず来にて思ひかねつも」
※東京灰燼記(1923)〈大曲駒村〉一六「火が鎮んで自宅の方を見ると」
[2] 〘他マ下二〙 ⇒しずめる(鎮)
しずも・る しづもる【鎮・静】
〘自ラ四〙 静かな状態でいる。静けさが深まる。
※あの道この道(1928)〈十一谷義三郎〉二「窓はそれぞれあの冷々と静もった高台の裾に面してゐて」
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