鉱業権
こうぎょうけん
登録を受けた一定の地域(鉱区)で、登録を受けた鉱物およびこれと同種の鉱床中に存する他の鉱物を掘採し、取得する権利。鉱業権は、鉱物を埋蔵している土地の所有権とは別個独立の権利であって、鉱業権を付与する権能は国に属する。
鉱業権を得ようとする者は、経済産業省経済産業局長に出願し、その許可を受け、鉱業原簿に登録することによって、鉱業権を取得する。鉱業権者となりうる者は日本国民または日本国法人に限られ、早く出願した者に優先的に許可が与えられる(先願主義)。原則として同一の地域では2以上の鉱業権を設定することができない。鉱業権には試掘権と採掘権との2種があり、採掘権は無期限、試掘権は登録から2年で2回(石油の場合は3回)延長できる。鉱業権は物権の一種とみなされ、不動産に関する規定が準用される。鉱業権は土地所有権とは別個の権利であるから、土地所有者といえども、可燃性天然ガスなどを自家用に供する場合を除いては、鉱業権がなければ鉱物を掘採できないし、これを犯せば罰せられ、また鉱業権者であれば、他人の土地からでも鉱物を掘採でき、そのために必要な限度で他人の土地を使用することも許される。鉱業権の譲渡その他の権利の変動は、鉱業原簿へ登録することによって効力を生じる。なお、鉱業権者は、権利取得後6か月以内に事業に着手し、法に従って鉱業を営み、鉱区税、鉱産税を納めなければならない。
[宮田三郎]
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鉱業権
こうぎょうけん
登録を受けた一定の区域において,登録を受けた鉱物およびこれと同種の鉱床中に存する他の鉱物を採掘し,その所有権を取得する権利。試掘権および採掘権の2種類からなる。試掘権は一定の鉱区において鉱物の採掘経営が成立するかどうかを探知するもので,存続期間は2年で2回 (石油試掘権は3回) にかぎり延長が認められる。採掘権は存続期間の制限はない。鉱業法 (昭和 25年法律 289号) に基づき鉱業出願に対する経済産業局長の許可処分によって成立するが,鉱業原簿への登録がその効力発生要件となっている。なお鉱業権は鉱区における登録鉱物に対する独占的排他的な権利で,物権とみなされるが,相続その他の一般承継,譲渡,滞納処分および強制執行の目的となるにすぎず,その他の権利の目的となることはできない。ただし,採掘権は抵当権と租鉱権の目的となる。処分について上記のような制限が課せられるのは,鉱業は鉱業権者自身によって実施されねばならないとする原則 (鉱業自営主義の原則) を鉱業法が示しているためである。
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鉱業権【こうぎょうけん】
鉱区で一定の鉱物を掘採し,取得する権利。鉱業法に基づき,試掘権と採掘権の2種があり,ともに通商産業局長の許可によって成立する。前者は鉱物の採掘経営が成立するか否かを探知することを目的とし,存続期間は2年。後者は鉱物を掘採して自己の所有物とし得る権利で,存続期間の制限はなく,かつ鉱業財団を組成して財団抵当の目的となり得る。鉱業権は物権として不動産の規定が準用され,権利変動は鉱業原簿への登録が効力発生要件である。→租鉱権
→関連項目試掘|抵当権|特許|物権|用益物権
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こうぎょう‐けん クヮウゲフ‥【鉱業権】
〘名〙 一定の鉱区で鉱物を採掘し取得する権利。鉱業法に基づき、経済産業局長の許可によって成立する。
※鉱業法(明治三八年)(1905)四条「鉱業権と称するは試掘権及採掘権を謂ふ」
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デジタル大辞泉
「鉱業権」の意味・読み・例文・類語
こうぎょう‐けん〔クワウゲフ‐〕【鉱業権】
一定の地域(鉱区)で、鉱物を採掘・取得する権利。土地の所有権とは別個の権利で、経済産業局長の許可を受け、登録して成立する。試掘権と採掘権とがある。
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こうぎょうけん【鉱業権】
登録を受けた一定の土地の区域すなわち鉱区において,登録を受けた鉱物を掘採取得する権利(鉱業法5条)。地中の未掘採鉱物の支配については,比較法的にみて,二つの制度がある。その一つは,英米法にみられるように土地所有権の支配に服せしめるものであり,いま一つは,大陸法にみられるように土地所有権とは別個の権利,すなわち,鉱業権の支配に服せしめるものである。日本ではドイツの鉱業法を継受したので,後者すなわち鉱業権制度を採用している。
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