釣り漁業(読み)つりぎょぎょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「釣り漁業」の意味・わかりやすい解説

釣り漁業
つりぎょぎょう

釣り糸と釣り針(ばり)を有する釣り具を使用し、餌(えさ)または擬餌(ぎじ)等の誘引物により水産動物を誘引して釣り針にかからせ漁獲する漁業をいう。釣り漁業の歴史は非常に古いが、大量の魚を一度に漁獲することができないため、網漁具の発達につれて漁業の中心は網漁業へ移っていった。しかし、現在でもなお釣り漁業は、網漁業と並んで漁業の二つの柱となっており、両方をあわせると日本の漁業生産の90%近くを占めている。

 釣り漁業は、一般に漁具の構造が簡単で多くの資金を必要とせず、このため漁獲は少なくても漁業として成立するという特徴がある。また、巧妙な技術を必要とするので、魚貝類の種類、習性海況、時期等にあわせて漁具・漁法が改良され、その種類は多岐にわたっている。そして網漁具では操業のできないような水深の深い所や潮流の速い所、海底岩礁の所、魚群が薄く網漁具では効果があがらないような所でも操業でき、さらには、漁獲物を生かしたまま帰港し、鮮度を高度に保つことができる等の利点がある。また、網漁具のように多人数を要せず、ほとんどのものは1人ないし数人で操業でき、漁船さえあれば簡単に着業できるので、沿岸の漁業者にとっては重要な漁業である。釣り漁業は漁法上からは、手釣り漁業、竿(さお)釣り漁業、機械釣り漁業、引縄(ひきなわ)漁業、立縄(たてなわ)漁業、延縄(はえなわ)漁業の6種類に分類される。

 2009年(平成21)の釣り漁業でおもな漁業種類の漁獲量は、マグロ延縄の16万トン、カツオ一本釣りの10万5400トン、イカ釣りの17万4400トンとなっている(水産庁「平成21年漁業・養殖業生産統計」による)。ここで取り上げたマグロ延縄、カツオ一本釣り、イカ釣りの各漁業は、釣りの操作などにおいて機械化が進んだ漁業で、産業上、とくに重要な漁業種類である。

[三浦汀介]

『金田禎之著『和文・英文 日本の漁業と漁法』(1995・成山堂書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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