針ノ木峠(読み)はりのきとうげ

精選版 日本国語大辞典 「針ノ木峠」の意味・読み・例文・類語

はりのき‐とうげ ‥たうげ【針ノ木峠】

長野県大町市と富山県立山町の境にある、針ノ木岳蓮華岳鞍部をこえる峠。北アルプスを横断し、信濃国越中国とを結ぶ要所であった。標高二五四一メートル。

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デジタル大辞泉 「針ノ木峠」の意味・読み・例文・類語

はりのき‐とうげ〔‐たうげ〕【針ノ木峠】

長野・富山の県境、飛騨山脈北部の針ノ木岳と蓮華れんげ岳との鞍部にある峠。海抜2541メートル。信濃越中から塩・魚を運んだ要所。

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日本歴史地名大系 「針ノ木峠」の解説

針ノ木峠
はりのきとうげ

針ノ木岳と蓮華れんげ岳の鞍部。標高二五四一メートルで、日本屈指の高峻な峠。越中から信州へ越えるコースの最高地点で、黒部奥山の関門ともいうべき要地であった。すでに戦国時代軍事目的で使用されていたことが永禄一一年(一五六八)と推定される二月二六日の寺嶋職定書状(芦峅寺文書)によって推測されるが、天正一二年(一五八四)には佐々成政が踏破した。加賀藩は国境警備上重視し、慶安元年(一六四八)実地踏査、峠を越えて信州野口のぐち(現長野県大町市)まで測量させた(「国事雑抄」、「奥山廻喜右衛門記録」県立図書館蔵)

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改訂新版 世界大百科事典 「針ノ木峠」の意味・わかりやすい解説

針ノ木峠 (はりのきとうげ)

長野・富山県境,針ノ木岳(2821m)と蓮華岳(2799m)の間の鞍部にある峠。標高2541mで飛驒山脈の峠のうちでは最も高く,日本でも赤石山脈の三伏(さんぷく)峠(2580m)に次ぐ。古くから信濃と越中を結ぶ交通路の要衝であり,1584年(天正12)越中の領主佐々成政が,豊臣秀吉に対抗するため徳川家康との同盟を期待して,雪の峠越えをしたことで知られる。江戸時代から明治末期まで富山県側から大町地方へ塩と魚を運ぶ移入路として利用された。1874年,現在の富山市東岩瀬から同市の旧立山町芦峅寺(あしくらじ)を経て針ノ木峠を越え,長野県大町市野口に至る馬車道(信越連帯新道)の開削が着手されたが,資金不足のため完成しなかった。峠西部の黒部渓谷はカモシカやクマ,イワナの宝庫であったため,信濃の猟師たちが針ノ木峠を越えて狩猟と漁労に出かけた。これは1955年ころまで続けられたが,今は行われず,また立山黒部アルペンルートも完成したため,峠は登山客が越えるのみである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「針ノ木峠」の意味・わかりやすい解説

針ノ木峠
はりのきとうげ

長野・富山県境、北アルプスの針ノ木岳(2821メートル)と蓮華(れんげ)岳(2799メートル)の鞍部(あんぶ)にある峠。標高2541メートルで、北アルプスを横断する峠では最高位。現在は登山者だけしか登らないが、戦国末から近世にかけては越中(えっちゅう)から信濃(しなの)へ塩や魚を移入する交通路であった。1584年(天正12)越中の領主佐々成政(さっさなりまさ)とその部下90余名は羽柴(はしば)秀吉に対抗するため、三河の徳川家康助力を求めて厳冬に峠を越えたがと伝える。家康との交渉はならずふたたび峠を越えて越中へ帰ったという。このとき軍資金百万両を峠付近に埋めたと伝えられ、現在もこれを探す人がいる。峠の北斜面に針ノ木大雪渓がある。6月の開山祭にあわせて、1930年(昭和5)峠に針ノ木小屋をつくった百瀬(ももせ)慎太郎を記念する慎太郎祭が行われる。

[小林寛義]

『市川健夫著『信州の峠』(1972・第一法規出版)』

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百科事典マイペディア 「針ノ木峠」の意味・わかりやすい解説

針ノ木峠【はりのきとうげ】

長野・富山県境にある針ノ木岳の南の峠。標高2541m。1584年織田信長の属将佐々氏は徳川家康と手を結ぶため,当峠を越えて越中と遠江の間を往復したという(当代記)。ざら峠越ともよばれた。幕末から明治にかけて信州と越中を結ぶ要路とされ,今も立山方面への登山路に利用される。
→関連項目立山[町]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「針ノ木峠」の意味・わかりやすい解説

針ノ木峠
はりノきとうげ

長野県大町市と富山県立山町の境にある峠。飛騨山脈を針ノ木岳と蓮華岳との鞍部で越える。標高 2541mで,塩見岳の南側にある三伏 (さんぷく) 峠に次いで,日本第2位の標高。西方の立山連峰をザラ峠で越えて信濃と越中を結ぶ交通路が通り,中世末から近世には利用者もあったが,立山黒部アルペンルートの開通後は登山者が利用。 1929年小屋が設けられ,後立山連峰の登山基地となっている。中部山岳国立公園に属する。

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事典・日本の観光資源 「針ノ木峠」の解説

針ノ木峠

(富山県中新川郡立山町・長野県大町市)
日本三大峠」指定の観光名所。

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