金銭信託(読み)キンセンシンタク

デジタル大辞泉 「金銭信託」の意味・読み・例文・類語

きんせん‐しんたく【金銭信託】

信託銀行が、委託者から金銭を受け入れ、信託終了のとき委託者に運用利益と元本を金銭で交付する信託形式。→金外信託

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精選版 日本国語大辞典 「金銭信託」の意味・読み・例文・類語

きんせん‐しんたく【金銭信託】

〘名〙 信託銀行が委託者から受け入れた金銭を信託契約に基づいて運用し、信託期間満期に元本、運用利益を金銭をもって委託者またはその指定する者に支払う信託方式。

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改訂新版 世界大百科事典 「金銭信託」の意味・わかりやすい解説

金銭信託 (きんせんしんたく)

信託財産として金銭で引き受け,信託終了のときに受益者に金銭で返還する信託をいい,信託銀行および信託業務を兼営する銀行で取り扱われている。広義には貸付信託年金信託財産形成信託および証券投資信託も金銭信託に属するが,これらはそれぞれ特別法に基づく信託であるため,通常は金銭信託に含めない。信託財産を引き受ける際に金銭で引き受けても,信託終了の際はそのときの信託財産(貸付金債権や株式,公社債の形)のままで受益者に返還する信託を〈金銭信託以外の金銭の信託〉(〈金外〉と略称)と呼ぶ。金外は,従業員持株信託など有価証券に対する投資ニーズの高まりにつれて増加している。明治期後半以来信託会社を自称していた金貸し業者においても金銭信託類似の業務が営まれており,日本の信託業は,金銭の信託を中心に発展してきた。金銭信託は第2次大戦以前の信託会社の中心的業務であった。

 金銭信託には次の三つがある。(1)無指定金銭信託 法令上運用の種類・範囲が限定され,その結果,妙味ある運用がなしえないため実例は皆無である。(2)特定金銭信託 運用方法を特定した金銭信託で,金銭を信託する際に受託者(信託銀行など)に対し運用の目的物と条件(融資先の名称,金額,期間,利率担保など)を確定して指示するものである。この信託は証券投資信託やアキュミュレーション特約つき(低クーポン債の償還差益を事業年度ごとに平準化して組み入れる方式)などに利用されているが,一般の例は少ない。なお信託終了の際は金銭で返還するのが建前であるが,そのときの信託財産(株式や公社債の形)のままで返還されることもある。(3)指定金銭信託 信託財産の運用範囲を概括的に定め(貸付金,公社債,コール・ローンなど),具体的な運用は受託者にゆだねる信託であり,合同運用と単独運用に分かれる。合同運用は,信託金を合同して運用するもので,現在は期間が1年以上,5000円からの金銭を引き受け,貸付信託を若干下回る収益配当を行っている。この信託は,具体的な運用を受託者(信託銀行など)に一任するため,信託銀行などが元金保証(元本補てん)をしており,また税制上収益金は利子所得とされ,マル優(少額貯蓄非課税制度。1988年4月廃止)と源泉分離課税の扱いができることになっている。合同運用指定金銭信託は,特定の目的のために資金を積み立て,定時定額に払い出す特約をつけることもできる。単独運用指定金銭信託は,個々の信託金ごとに単独に運用する信託であり,金利規制外の金融商品であるため,第2次大戦直後に人気を集めて金銭信託の8割を占めた時期もあったが,1952年に貸付信託ができてからは激減し,現在では年金信託,公益信託および特定贈与信託などで利用される程度である。
信託 →信託銀行
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金銭信託」の意味・わかりやすい解説

金銭信託
きんせんしんたく

信託財産として金銭を受け入れ、信託終了時に金銭で交付することを約した信託。運用方法により次の3種に分類される。

(1)特定金銭信託 委託者が運用方法を詳細に指示するもので、元本保証はなく収益配当は実績しだい。証券投資信託がその好例である。

(2)指定金銭信託 委託者は運用の範囲を限定するだけで、受託者が運用責任を果たすもの。例外的に大小資金の合同運用、元本保証、収益保証を認められたのが合同運用指定金銭信託で、金銭信託の圧倒的部分を占めている。一般に金銭信託とよぶときには、これをさすことが多い。

(3)無指定金銭信託 運用方法を特定も指定もしないもので、一見自由にみえるが、厳しい法的規制のため、現実には妙味なく契約は皆無の状態である。

[麻島昭一]

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百科事典マイペディア 「金銭信託」の意味・わかりやすい解説

金銭信託【きんせんしんたく】

信託預金とも。委託者から信託財産として金銭を受け入れ,この運用によって生じた利益を受益者に配当し,信託終了時に元本を金銭で受益者に交付する信託。受入れ時の運用方法の定め方により,1.指定金銭信託,2.特定金銭信託,3.無指定金銭信託,に区分され,1.は運用の方法,目的物の範囲を定めたもので大部分を占め,2.は運用と目的物を具体的に定めたもの。3.の実例はほとんどない。また金銭を受託しても終了時に運用されたままの財産形態で交付するものは,同じく金銭の信託ではあるが,〈金銭信託以外の金銭の信託〉または〈金外信託〉と呼んで区別される。→貸付信託指定金銭信託投資信託
→関連項目信託信託預金

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金銭信託」の意味・わかりやすい解説

金銭信託
きんせんしんたく
cash in trust

信託引受に際して信託財産として金銭を受け入れ,信託の終了時に元本である信託財産を金銭で受益者に交付する信託。信託業法施行細則2条甲1項による運用方法の区分を基準として,特定金銭信託,指定金銭信託,無指定金銭信託の 3種類に分けられる。特定金銭信託は,信託財産の運用方法を委託者が具体的に定めるもの。指定金銭信託は,委託者が信託財産を貸付金や株式の運用など,指定を行なうだけで,受託者の裁量にまかせるもの。無指定金銭信託は,委託者が運用方法に関して特定も指定もしない金銭信託だが,その運用方法は信託業法施行細則により厳しく制限されているため,運用方法は安全で確実である。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「金銭信託」の解説

金銭信託

信託銀行が個人、企業の顧客から金銭を信託財産として預かり、事業会社への貸し出し、社債の買い入れなどで運用、そして、契約期間が経過後に、運用で得られた利益を元本に乗せ顧客に渡す金融商品。様々な応用商品があり、ヒット、スーパーヒットなど契約後1カ月~1年を過ぎると解約可能になるタイプの金銭信託も。原則として、元本が保証されない点で投資信託に似ているが、投資信託は運用を信託銀行の運用会社が行なうのに対し、金銭信託は信託財産の運用を信託銀行自身が行なう点で異なる。

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投資信託の用語集 「金銭信託」の解説

金銭信託


金銭を信託財産として預かり、運用して、一定期間後に収益や元本を金銭で渡す信託の一形態のこと。一般的な投資信託は、投信法第5条の3の規定により「金銭信託」でなければならない。この規定では、金銭によって投資信託の設定や解約を行うことを定めている。つまり、投資家が投資信託を購入する際は販売会社に「お金を支払い」、解約する際は「お金を受け取る」ということ。なお、現物の拠出・交換が行われるETFは金銭信託の例外である。

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