金嬉老(読み)きんきろう

百科事典マイペディア 「金嬉老」の意味・わかりやすい解説

金嬉老【きんきろう】

いわゆる〈金嬉老事件〉の犯人在日韓国人2世。1962年2月に静岡県清水市(現,静岡市清水区)で暴力団幹部ら2名を射殺し,同県の寸又峡(すまたきょう)温泉の旅館に13人を人質として籠城した事件の犯人で,無期懲役判決を受けた。事件の原因は直接的には借金問題であったが,報道機関に対して〈事件の裏には朝鮮人差別の問題がある〉と訴えたことから,韓国では〈差別と闘った英雄〉と評価する声も上がった。その後,日韓両国で仮釈放を求める署名運動などが起き,1999年に仮釈放となり,韓国釜山(ふざん)/(プサン)に移り住んだ。金の死去に際し,政治学者で同じ在日韓国人2世の姜尚中(カンサンジュン)は〈過ちを犯した元受刑囚はヒーローではないが,ただの犯罪者でもない〉と語っている。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「金嬉老」の解説

金嬉老 キム-ヒロ

1928-2010
昭和3年11月20日在日朝鮮人2世として静岡県に生まれる。昭和43年債権取り立てをめぐって清水市内で暴力団員ふたりをライフル銃で射殺。寸又(すまた)峡温泉の旅館で宿泊客を人質にとりダイナマイト武器に籠城し,在日朝鮮人への差別の現実をうったえる。88時間後に逮捕され,50年無期懲役が確定。平成11年仮出獄し,韓国にかえる。平成22年3月26日死去。81歳。本名は権禧老(クオン-ヒロ)。

金嬉老 きん-きろう

キム-ヒロ

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