金史良(読み)キムサリャン(英語表記)Kim Sa-ryang

デジタル大辞泉 「金史良」の意味・読み・例文・類語

キム‐サリャン【金史良】

[1914~1950?]朝鮮作家本名金時昌キムシチャン平壌ピョンヤン生まれ。日本に留学し、東京帝国大学卒業。在日中に書かれた「光の中に」は芥川賞候補となった。第二次大戦後は朝鮮に帰国し、作家として朝鮮戦争従軍戦中に行方不明となった。他に「海への歌」「太白山脈」など。きんしりょう。

きん‐しりょう〔‐シリヤウ〕【金史良】

キム=サリャン

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改訂新版 世界大百科事典 「金史良」の意味・わかりやすい解説

金史良 (きんしりょう)
Kim Sa-ryang
生没年:1914-50

朝鮮の作家。本名は金時昌。平壌生れ。1933年に渡日し旧制佐賀高校を経て東京帝国大学を卒業。39年《文芸首都》に掲載した日本語による《光の中に》が芥川賞候補作となり,文壇が注目する中で相ついで力作を発表し,小説集《光の中に》《故郷》を上梓した。太平洋戦争とともに予防拘禁され,のちに帰国。その後も日本語で《海への歌》《太白山脈》など長編を新聞,雑誌に連載。45年春,在中国・朝鮮人学徒兵慰問のため中国へ派遣された機会に解放区へ脱出,延安の朝鮮独立同盟に参加し日本の敗戦後帰国。朝鮮民主主義人民共和国で解放後の現実に触れながら作品活動を展開,《馬息嶺》《雷鳴》など小説や戯曲を発表。50年の朝鮮戦争の際従軍作家となって南下するが,人民軍の撤退のおり持病の心臓病が悪化し,隊列を離れてのち消息を絶つ。《光の中に》は在日朝鮮人文学の先駆的作品である。《金史良全集》4巻(1973)は日本で刊行された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金史良」の意味・わかりやすい解説

金史良
きんしりょう / キムサリャン
(1914―?)

朝鮮の作家。平壌(ピョンヤン)生まれ。1932年に渡日。東京帝国大学独文科卒業。『朝鮮日報』学芸部記者を経て東京帝大大学院へ進む。39年『文芸首都』に発表した『光の中に』が第10回芥川(あくたがわ)賞候補となり文学的出発を行う。『天馬』『草深し』『無窮一家』などを次々に発表、植民地下朝鮮の悲惨な現実や在日朝鮮人の苦難に満ちた生活を直視するなかで自由への道を模索した。41年12月検挙、翌年2月釈放と同時に帰国。日本での作品集に『光の中に』(1940・小山書店)、『故郷』(1942・甲鳥書林)がある。朝鮮にて長編『太白山脈』(日本語)、『海への歌』(朝鮮語)などを発表。45年春、中国抗日地区へ脱出、朝鮮義勇軍に参加。解放直後に帰国し、小説、戯曲、ルポルタージュなどを発表。作品集に『風霜』(1948・朝鮮人民出版社)がある。50年朝鮮戦争開始時に従軍作家として人民軍に従軍、同年秋に戦死したとみられている。

[任 展 慧]

『『金史良全集』全4巻(1973・河出書房新社)』『安宇植著『金史良――その抵抗の生涯』(岩波新書)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「金史良」の解説

金史良 キム-サリャン

1914-? 朝鮮の小説家
1914年3月3日生まれ。1933年(昭和8)来日。芥川賞候補作となった「光の中に」や「故郷」などに植民地朝鮮の現実をえがく。1943年帰国。1945年中国共産党の解放地区に脱出し,朝鮮独立同盟に参加,解放後は朝鮮民主主義人民共和国で作家活動をつづけた。1950年朝鮮戦争に従軍し,11月ごろ消息をたった。平壌出身。東京帝大卒。本名は時昌(シチヤン)。

金史良 きん-しりょう

キム-サリャン

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百科事典マイペディア 「金史良」の意味・わかりやすい解説

金史良【きんしりょう】

朝鮮の作家。日本に留学して佐賀高校,東京大学在学中に発表した日本語小説の中で《光の中に》が芥川賞候補となり注目される。《土城廊》《天馬》などは作品集《光の中に》《故郷》に収められた。植民地末期にも《ムルオリ島》《太白山脈》の佳作を残す。戦争末期に中国に脱走,《駑馬万里》を書く。朝鮮戦争の時に従軍南下し行方不明となる。

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世界大百科事典(旧版)内の金史良の言及

【在日朝鮮人】より

…日本のプロレタリア文学運動の中で活動した作家に鄭然圭,韓植,金熙明,詩人に金竜済,白鉄,姜文錫(きようぶんしやく)らがいる。その運動が解体しはじめたころに張赫宙(ちようかくちゆう)は〈餓鬼道〉(1932)で日本文壇に登場,植民地下朝鮮農民の現実を骨太な筆致で描いて好評を得(のちに皇民化運動に荷担する),また金史良は〈光の中に〉が,李殷直の〈ながれ〉とともに1939年に第10回芥川賞候補となり,作家活動に入った(太平洋戦争開始時に検挙され釈放後ただちに帰国)。この時期に〈在日〉朝鮮人の文学は本格的に始まったといえよう。…

※「金史良」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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