金剛智(読み)こんごうち

精選版 日本国語大辞典 「金剛智」の意味・読み・例文・類語

こんごう‐ち コンガウ‥【金剛智】

[1] 〘名〙 仏語。如来智慧仏智金剛のように、煩悩(ぼんのう)を打破するところからいう。
※教行信証(1224)三「是仏世尊。有金剛智、能破衆生一切悪罪」 〔仁王経‐上〕
[2] (Vajrabodhi) 中インドの人。諡(おくりな)は灌頂国師。龍樹弟子龍智に師事。唐の開元七年(七一九)に中国に渡り、中国の真言宗の初祖となる。門下一行、不空などが出た。「瑜珈念誦法」「七倶胝陀羅尼」「観自在瑜珈法要」などの訳がある。開元二九年(七四一)広福寺で入寂。一説に同二〇年とも。年七一という。

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デジタル大辞泉 「金剛智」の意味・読み・例文・類語

こんごうち【金剛智】[人名]

《〈梵〉Vajrabodhiの訳》[671~741]中国、唐代の僧。中インドの王子とも南インドのバラモン出身ともいう。竜智密教を学び、これを洛陽・長安で広めた。仏典漢訳も多い。密教付法の八祖(真言八祖)の第5、中国密教の初祖とされる。

こんごう‐ち〔コンガウ‐〕【金剛×智】

仏の智慧。きわめて堅固な智慧。
[補説]人名別項。→金剛智

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金剛智」の意味・わかりやすい解説

金剛智
こんごうち
(671―741)

インドの僧。サンスクリット名はバジラボディVajrabodhi。中インドの王子とも、南インド、マウルヤ国のバラモンの出身ともいわれる。10歳でナーランダ寺で出家し、ここで大乗仏教の論書『般若燈論(はんにゃとうろん)』『百論』『十二門論』『瑜伽(ゆが)論』『唯識(ゆいしき)論』『辨中辺(べんちゅうへん)論』を学んだ。さらに南インドで『金剛頂経(こんごうちょうぎょう)』系の密教を修め、インド、スリランカなどを巡ったのち、航路で中国に行き、720年(開元8)洛陽(らくよう)に入った。玄宗庇護(ひご)のもと、洛陽と長安にあって、723年から約20年間に『金剛頂瑜伽中略出念誦(りゃくしゅつねんじゅ)経』4巻をはじめ、おもに『金剛頂経』系統の経典、儀軌(ぎき)を翻訳した。『金剛頂経』などのインド密教中期の密教経典を次々に紹介したことは、善無畏(ぜんむい)による『大日(だいにち)経』の翻訳とともに、中国密教確立の端緒となった。のち、弟子の不空(ふくう)の奏請により、大弘教三蔵(だいぐきょうさんぞう)の諡号(しごう)を賜る。真言宗付法の第五祖。『大日経』系の善無畏と、『金剛頂経』系の金剛智との間に交渉があったといわれるが、不明である。

[小野塚幾澄 2016年11月18日]

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改訂新版 世界大百科事典 「金剛智」の意味・わかりやすい解説

金剛智 (こんごうち)
Jīn gāng zhì
生没年:671-741

中国唐代の訳経僧,密教付法の第5祖。インド摩羅耶国の王族といわれ,本名はバジュラボディVajrabodhi(跋日羅菩提)。ナーランダー寺に出家し律,唯識を修め,さらに竜智から金剛頂など真言密教の奥旨を受けた。のち唐への伝導を決意,海路により720年(開元8)長安に達し,20年の間,訳経のかたわら密教の普及につとめ,玄宗の勅命により大慈恩寺に住した。のち洛陽に没した。《金剛頂瑜伽中略出念誦経》訳出は金剛界系密教の基礎となった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金剛智」の意味・わかりやすい解説

金剛智
こんごうち
Vajrabodhi

[生]671頃
[没]開元29(741).洛陽
密教付法相承の第5祖,中国密教の第1祖。跋日羅菩提と音写される。南インドの王族の出身,あるいは中インドのバラモンの出身ともいわれ,ナーランダ寺で出家。 31歳のとき,龍樹の弟子である南インドの龍智のもとで,密教の奥義を学ぶ。唐の玄宗の頃,開元8 (720) 年に中国の長安に渡って密教を布教した。さらに灌頂の道場を建て,『金剛頂経』など密教関係の経典8部 11巻を漢訳し,のち広福寺で 71歳で没した。

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旺文社世界史事典 三訂版 「金剛智」の解説

金剛智
こんごうち

671〜741
唐に渡来した密教の僧
南インドの王族出身。31歳のとき竜智 (りゆうち) に師事して真言密教の奥旨をきわめ,720年南海から洛陽に来て密教を広めた。また723年より仏典8部11巻を漢訳。弟子に不空 (ふくう) ・一行 (いちぎよう) がいる。

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