金丹(読み)きんたん

精選版 日本国語大辞典 「金丹」の意味・読み・例文・類語

きん‐たん【金丹】

〘名〙 昔、道士などが金石をくだき、練って調製したという不老不死の薬。転じて妙薬、高価薬。
霊異記(810‐824)上「財(たから)売りて既に金丹等の物を買ひ得て」 〔抱朴子‐金丹〕

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デジタル大辞泉 「金丹」の意味・読み・例文・類語

きん‐たん【金丹】

昔、道教の道士が金石を砕いて練って作ったという不老不死の薬。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金丹」の意味・わかりやすい解説

金丹
きんたん

中国道教で説く仙人になるための薬。晋(しん)の葛洪(かっこう)の『抱朴子(ほうぼくし)』金丹篇(へん)では、不老長生を得るには金丹を服用することがもっとも肝要であるとする。金丹の金は、火で焼いても土に埋めても不朽である点が重んじられ、丹の最高のものは九転の丹で、焼けば焼くほど霊妙に変化する点が重んじられた。この九転の丹を服用すると3日で仙人になれるとされる。この大薬である金丹をつくる際には、人里離れた名山斎戒沐浴(さいかいもくよく)し、身辺を清潔にしなければならないとされ、丹砂(たんしゃ)、水銀などを原料にした多くの錬丹法が説かれた。後世では、この金丹を服用する外丹(がいたん)の方法のほかに、内丹説が説かれた。その代表的なものが北宋(ほくそう)の張伯端(ちょうはくたん)の『悟真(ごしん)篇』である。そこでは、人間には本来、丹砂、水銀に代わるものが体内に備わっている。それが竜虎真陰陽(りゅうこしんいんよう)の気であって、これを運用することにより、体内に金丹をつくりあげれば仙人になれると説かれている。この内丹説は南宋白玉蟾(はくぎょくせん)などに継承された。

砂山 稔]

『吉岡義豊著『永生への願い 道教』(1970・淡交社)』『窪徳忠著『道教史』(1977・山川出版社)』

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普及版 字通 「金丹」の読み・字形・画数・意味

【金丹】きんたん

道家仙薬。〔抱朴子、金丹〕昔、左元放、天山中に於て思し、人之れに金丹仙經を授く。末の亂に會ひ、合作するに遑(いとま)あらず。而して地をけて、江東に來渡す。

字通「金」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の金丹の言及

【悟真篇】より

…北宋の紫陽真人張伯端(987‐1082)の撰。金丹道教の哲理を詩的表現を用いて述べたものである。古く,晋の葛洪(かつこう)の《抱朴子》では,丹砂,水銀を鍛錬して金丹を作り,それを服用すれば仙人になれるとする。…

【仙薬】より

…仙人になるための薬。中国,晋の葛洪の《抱朴子》では,その〈金丹篇〉において,不老長生を得るには金丹を服用することが最も肝要であるとする。金丹の金は火で焼いても土に埋めても不朽である点が重んじられ,丹の最高のものは九転の丹で,焼けば焼くほど,霊妙に変化する点が重んじられた。…

【丹】より

…中国,道教でいう不老長生を得るための薬。晋の葛洪の《抱朴子》では,不老長生を得るには,金丹を服薬することが最も肝要であるとする。金丹の金はその火で焼いても土に埋めても不朽である点が重んじられ,丹の最高のものは九転の丹で,焼けば焼くほど,霊妙に変化する点が重んじられ,この九転の丹を服用すると3日で仙人になれると説く。…

※「金丹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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