量子統計力学(読み)リョウシトウケイリキガク

デジタル大辞泉 「量子統計力学」の意味・読み・例文・類語

りょうし‐とうけいりきがく〔リヤウシ‐〕【量子統計力学】

量子として振る舞う同種粒子集団を統計的に扱う理論

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化学辞典 第2版 「量子統計力学」の解説

量子統計力学
リョウシトウケイリキガク
quantum statistical mechanics

量子力学基礎とした統計力学.しかし,今日では統計力学といえば,おもに量子統計力学のことを意味する.粒子はパウリの原理,すなわち,一つの量子状態にはただ一つの粒子のみが入りうるという原理に支配されるものとされないものとに区別される.前者に属するものは,電子,陽子中性子あるいはこれら素粒子の奇数個から構成され半整数スピンをもつ粒子で,フェルミ-ディラックの統計(単にフェルミ統計ともいう)に従う.後者に属するものは光子,中間子,ヘリウム原子 4He のように0または整数のスピンをもつ粒子で,ボース-アインシュタイン統計(単にボース統計ともいう)に従う.いま,粒子数N個で粒子間の相互作用のエネルギーが無視できるような系を考えて,1個の粒子に許される量子状態の数は,各エネルギー固有値 εj にそれぞれ Δj 個あるとする( j = 1,2,…).エネルギー εj をもつ粒子が nj 個あるような,すなわち,

(n1n2,…) = {nj}
の組で指定された系全体の状態の数 W{nj} は,

で与えられる.両者の違いは上述したように,一つの量子状態にただ1個の粒子のみが入るとする条件の有無による.フェルミ統計,ボース統計をまとめて量子統計といい,これに対して古典力学を基礎としているボルツマン統計

をとくに古典統計力学とよぶことがある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「量子統計力学」の意味・わかりやすい解説

量子統計力学【りょうしとうけいりきがく】

マクスウェルボルツマンが立てた古典統計力学が古典力学を基礎とするのに対し,量子力学に基づく統計力学をいう。量子論に登場する粒子はフェルミ粒子フェルミオン)とボース粒子ボソン)に大別されるが,量子統計力学では同種の粒子は本質的に区別されず,同一の量子状態を2個以上の同種粒子が占めることが許されないフェルミ・ディラック統計と,2個以上が占めることを許されるボース・アインシュタイン統計とがある。粒子間の相互作用が小さいとき,スピンが半整数の粒子(電子,核子などのフェルミ粒子)の集団は前者に,スピンが整数の粒子(光子などのボース粒子)の集団は後者に従う。
→関連項目原子核模型ディラックパウリの原理フェルミフェルミ粒子ボース粒子

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「量子統計力学」の意味・わかりやすい解説

量子統計力学
りょうしとうけいりきがく
quantum statistical physics

物質を構成する微視的粒子が量子力学に従って運動するとし,これらの統計平均的な法則によって物質の巨視的な性質や巨視的な物理法則を論じる物理学の分野。統計力学において微視的粒子の運動は,初期には古典力学に基づいて論じられたが,量子論の発展に伴って量子力学に基づいて論じなければならないことが明らかとなった。前者を古典統計力学,後者を量子統計力学と呼んで区別する。

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改訂新版 世界大百科事典 「量子統計力学」の意味・わかりやすい解説

量子統計力学 (りょうしとうけいりきがく)

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世界大百科事典(旧版)内の量子統計力学の言及

【統計力学】より

…さらにフォン・ノイマンによりΓ空間の確率密度ρは密度行列,あるいは統計演算子に置き換えられた。このときギブズの統計力学は完璧に量子力学に翻訳されて,量子力学に基づく量子統計力学に変貌できたために,ボルツマン=プランクの方法はとって代わられることとなった。30年代初頭には原子分子の内部構造や分子間力もだいたい明らかとなり,興味の中心は固体,とくに相転移問題に移る。…

【量子統計】より

…統計力学とは,熱力学的対象の力学構造を知ることにより,その熱力学を決めていく学問であるが,対象となる系の力学構造が本質的に量子力学である場合の統計力学を量子統計力学quantum statical mechanicsといい,量子統計力学で用いられる統計的手法を量子統計と呼ぶ。 物理量fの熱力学的観測値は,古典統計力学では,対象となる系の力学状態を表す位相空間内でのfの平均値にすり代えられる。…

※「量子統計力学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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