野郎虫(読み)やろうむし

精選版 日本国語大辞典 「野郎虫」の意味・読み・例文・類語

やろう‐むし ヤラウ‥【野郎虫】

〘名〙 野郎役者をののしっていう語。
評判記・野郎虫(1660)「やらう虫といふものは、〈略〉祇園円山・霊山あたりへとびめぐりて、人のきんちゃくをねらふといふ。それは四条かはらのかぶき子の事にては候はぬかといへば、大手をうってわらひて、さればとよ、そのかぶき子といふもの」

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改訂新版 世界大百科事典 「野郎虫」の意味・わかりやすい解説

野郎虫 (やろうむし)

役者評判記(野郎評判記)。著者不詳。1660年(万治3)4月上旬刊。1冊。本屋仁兵衛版(天理図書館蔵。後半のみ伝存)。なお,刊年を削った後刷本に,正本屋五郎兵衛版(伝本不明。ただし,稀書複製会本がある)がある。役者評判記で最初のものとされる,1656年(明暦2)刊の《役者の噂》が,伝本不明のため,現存最古の役者評判記といえる。本書は,初世玉川千之丞以下41人の京都四条河原(村山座,夷屋(えびすや)吉郎兵衛座,中村勘五郎座)の歌舞伎役者の評判を収録。序文には,〈かぶき子〉といわれた当時の歌舞伎役者の生態観客の様子,男色の歴史を興味本位に述べ,本文では,個々の役者の紋と好色的な評判に,狂詩・狂歌を付す。資料の少ない野郎歌舞伎時代の評判記として貴重。《歌舞伎評判記集成》第1巻に収録。
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