野草(植物)(読み)やそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「野草(植物)」の意味・わかりやすい解説

野草(植物)
やそう

栽培されていない野生の草本植物をいう。野草のなかには、昔から日本各地にみられる在来植物のほかに、外国種が渡来して雑草となって広がったものも多い。これが、いわゆる帰化植物といわれるもので、東京、大阪などの大都市の路傍や空き地に多く生育している。ヒメジョオンセイヨウタンポポムラサキカタバミオオマツヨイグサなどはこうした都市の野草といえる。農耕地や放牧地に生育する野草のうち、人間生活の影響下にあるものとしてトキワハゼオオジシバリスイバレンゲソウチカラシバススキなどがあげられる。これらは生態学的には人里植物とよばれる植物である。高山や山里の森林、草原には日本の在来種や特産種が多い。高山の草原でお花畑をつくる植物は1000種以上もあり、シシウド、ニッコウキスゲクガイソウタカネマツムシソウアキノキリンソウヤマトリカブトなどがよく知られている。森林の林床にはツバメオモトゴゼンタチバナイワカガミハリブキ、カニコウモリなどが生育している。

 野草は昔から薬用、食用、染料などに利用され、人間生活と深くかかわり合ってきた。ドクダミゲンノショウコ民間薬としてよく用いられてきたし、春の七草をはじめ、ふきのとう、タラの芽、ヤマノイモのむかごなどは山菜として珍重されている。アカネ、ムラサキは染料として、カラムシ、アマは繊維源として古くから日本で利用されてきたものである。

[杉山明子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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