野田佳彦内閣(読み)のだよしひこないかく

百科事典マイペディア 「野田佳彦内閣」の意味・わかりやすい解説

野田佳彦内閣【のだよしひこないかく】

2011年8月,菅直人内閣総辞職を受け,民主党代表選挙で選出された野田佳彦が国会で内閣総理大臣(第95代)に指名され,鳩山,菅政権に引き続き国民新党と連立して組閣。外務大臣玄葉光一郎,財務大臣安住惇,厚生労働大臣小宮山洋子,環境大臣細野豪志など。内閣官房長官藤村修。国民目線に立った政治の実現をかかげ,東日本大震災からの復興,原発事故の収束,社会保障と税の一体改革などに取り組むという基本方針を打ち出した。外交面では,基軸となる日米同盟の深化とアジア諸国との多角的な結合を高める,としている。12月,東日本大震災からの復興とアジアの経済成長を取りこんで日本経済を再活性化させ,実質成長率2%を目指すとする〈日本再生の基本戦略〉を閣議決定,2012年1月,岡田克也らを入閣(国務大臣)させるなど内閣を改造した。当面の最大の課題は,EUソブリンリスクなど国際的信用不安が拡大しているなか,歴代内閣が先送りしてきた財政再建消費税増税問題で,2012年3月,党内の反対を抑えて税率5%の現行消費税を10%に段階的に引き上げる消費増税関連法案を閣議決定し国会に上程,民主党政権の存立を賭ける政治課題に取り組んだ。しかし,党内最大勢力の小沢一郎を中心とするグループは消費税増税に反対,3月の衆議院における消費税増税に反対票を投じ,7月,小沢はグループを率いて離党,脱原発と消費増税反対を掲げて新党国民の生活を結成した。野田政権は,8月消費税増税法案を参議院で民主党・国民新党・自民党公明党の賛成多数で成立させたものの,党勢を失ったまま,野田首相は2012年12月に衆議院を解散,内閣は総辞職した。同月の総選挙で民主党は大敗を喫し,政権を自民・公明連立による第二次安倍晋三内閣に明け渡すこととなった。
→関連項目菅直人原子力安全委員会原子力安全・保安院原子力規制庁社会保障国民会議消費税電力システム改革日本細野豪志民主党(日本)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「野田佳彦内閣」の意味・わかりやすい解説

野田佳彦内閣
のだよしひこないかく

(2011.9.2~2012.12.26 平成23~24)
2011年(平成23)9月に成立した民主党と国民新党による連立内閣。菅直人(かんなおと)首相の退陣表明を受け、8月29日の民主党代表選挙で野田佳彦が民主党代表に就任、翌日の衆参両院での首班指名選挙で 野田が第95代内閣総理大臣に指名され、9月2日に正式に発足した。

 組閣にあたっては、野田グループの藤村修(ふじむらおさむ)(1949― )を官房長官に、蓮舫(れんほう)(1967― )を行政刷新担当大臣に任命した。小沢一郎グループから一川保夫(いちかわやすお)(1942― )防衛大臣と山岡賢次(やまおかけんじ)(1943― )国家公安委員長・消費者問題拉致(らち)問題担当を起用する一方、反小沢の急先鋒(きゅうせんぽう)である岡田克也(おかだかつや)(1953― )前幹事長、枝野幸男(えだのゆきお)(1964― )前官房長官、仙谷由人(せんごくよしと)(1946―2018)前官房副長官を起用せず、最大限の党内融和を演出した。また前内閣からは鹿野道彦(かのみちひこ)(1942―2021)農林水産大臣、細野豪志(ほそのごうし)(1971― )環境大臣(原発担当)、平野達男(ひらのたつお)(1954― )復興・防災担当大臣、自見庄三郎(じみしょうざぶろう)(1945― )金融・郵政改革担当大臣(国民新党)の4名を再任した。

 内閣の課題として東日本大震災の復興と東京電力福島第一原子力発電所事故の収束を最優先課題と位置づけ、復興財源としての臨時増税を目ざす姿勢は示したものの、時期については明言を避けた。また既存原子力発電所の再稼動を容認する立場をとり、早期の第3次補正予算の作成と急激かつ歴史的な円高への対策も緊急の課題とした。

 内閣発足当時、内閣支持率は急速に回復し朝日新聞の世論調査では53%となったが、前2代の民主党政権発足時の高支持率には及ばなかった。9月10日には鉢呂吉雄(はちろよしお)(1948― )経済産業大臣が東京電力福島第一原子力発電所事故の現場周辺を「死の町」と発言したことなどの責任をとって辞任し、後任には枝野前官房長官が任命された。2012年8月、税率引上げを伴う消費税法改正法を可決・成立させた。2012年11月に野田首相は衆議院を解散して12月の総選挙に臨んだが、自由民主党に大敗し、内閣は総辞職した。

[伊藤 悟]

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