重箱(読み)じゅうばこ

精選版 日本国語大辞典 「重箱」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐ばこ ヂュウ‥【重箱】

〘名〙
① (「じゅう」は「重」の慣用音) 食物を入れる木製の四角な容器。二重、三重に重ねられるようにしてあり、漆塗りが多く、蒔絵(まきえ)などをほどこした精巧なものもある。ちょうばこ。〔天正本節用集(1590)〕
遊里で、芸者幇間(ほうかん)などが、花代・揚代の二重売りをすること。
洒落本・虚実柳巷方言(1794)中「揚の日又揚売て二重になるを重箱(ヂウバコ)といふ」

かさね‐ばこ【重箱】

〘名〙 幾つも積み重ねるようにした箱。

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デジタル大辞泉 「重箱」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐ばこ〔ヂユウ‐〕【重箱】

料理を詰める箱形のふた付き容器。二重・三重・五重と重ねて用いる。漆塗りが多く、蒔絵まきえを施したものもある。お重。
[類語]お重組み重重ね重わりご入れ子

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改訂新版 世界大百科事典 「重箱」の意味・わかりやすい解説

重箱 (じゅうばこ)

食物を種別して盛るための重ね容器。家庭でおもに正月や節供,物見遊山などの際に使用されるが,祝儀,不祝儀,お見舞などの贈答として他家へ料理を配る場合にも用いられる。形式は通常,方形扁平の箱を3重あるいは4重,5重に重ね,最上階の箱に蓋をするが,ときに円形六角形,八角形につくることもある。大きさはさまざまで一定しないが,6寸(約18cm)から1尺(約30cm)程度までのものが一般的である。陶器製のものなどもあるがほとんどは木製の塗物で,それも内面を朱漆,外面を黒漆に塗りわけた内朱外黒の無地のものが多い。またこれに,蒔絵(まきえ)や螺鈿(らでん)などで精巧な装飾文をほどこしたものや,春慶塗などのものもある。〈重箱〉の名は室町時代の饅頭屋本(まんじゆうやぼん)《節用集》に見え,《好古日録》に記されるように,直接的には重ねの食籠(じきろう)から転じたものと思われる。しかし器形や木組みの手法などは,むしろ法華経や最勝王経など数そろいの巻子経を納置するために平安時代から多用されてきた重ね経箱と軌を一にするもので,このような伝統的な重ね箱の形成が生活用具としての重箱の形式に範とされたに違いない。食籠は多く円形あるいは六角,八角などの多角形をなす重ね容器で,室町時代には棚飾の道具の一つとして流行した。この時代の《仙伝抄》《君台観左右帳記(くんだいかんそうちようき)》《御飾記(おかざりき)》などの棚飾図中にも描かれ,その実体が知られる(座敷飾)。

 なお重箱の一種の提重(さげじゆう)は,花見遊山など外での酒宴等に便利なように,携帯用重箱として工夫されたものである。組重箱をそのまま手提台にのせ,さげるようにした簡単なものと,提鐶(さげわ)のついた枠型の中に重箱,銀あるいは錫製の酒瓶,杯,銘々皿などを一具として組み入れたものがある。提重は江戸初期の風俗画として著名な東京国立博物館の《洛中風俗図屛風》中の四条河原の場面に,総体黒漆塗蒔絵の事例が描かれており,このころには形式的には完成していたことが知られるが,以後江戸時代を通じて普及した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「重箱」の意味・わかりやすい解説

重箱
じゅうばこ

食物容器の一つで、同じ大きさの方形の箱を重ねた容器で、蒔絵(まきえ)などの装飾を施したものが多い。もともと食物の容器には中国渡来の「食籠(じきろう)」というものがあったが、食籠から発達転化して重箱が生まれた。「重箱」の語の初見は室町時代末の『饅頭屋(まんじゅうや)本節用集』で、すなわち少なくともそのころから使用されていたことがわかる。江戸時代の初めころには、宴席での肴(さかな)を盛る器として使われ、またそのまま野外の行楽にも持ち出された。しかし、江戸時代中期から陶磁器の皿や鉢が普及し、また提げ重箱という携帯用の重箱が考案されると、本来の重箱は正月や雛(ひな)祭り、あるいは贈答など、現在と同じ用途に使われるようになった。

[森谷尅久]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「重箱」の意味・わかりやすい解説

重箱
じゅうばこ

料理を盛り付けた方形や円形などの容器を 2~5段に重ねて使用する箱型の容器。最上段にはふたが付く。漆器が多いが,木製や磁器製,プラスチック製のものもある。食籠(じきろう),衝重(ついがさね)(→三方)から発展したものと考えられ,重箱の名は室町時代以降の文献にみられる。
重箱に詰めた料理を重詰(じゅうづめ)といい,正月の御節料理や物見遊山の際の弁当がその代表である。重箱は外気の温度が内部に伝わりにくく,乾燥も防ぐので,料理の保存に適している。また重ねて用いるので場所をとらない。味をやや濃くし彩りよく盛り付けることが肝心である。

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百科事典マイペディア 「重箱」の意味・わかりやすい解説

重箱【じゅうばこ】

食物を入れる重ねの箱。正月や節供,祝儀,不祝儀のときなどに用いられる。方形扁平の箱を3重,4重,5重に重ね,上の箱にふたをする。大きさは方6寸,7寸,8寸,1尺などがあり,表は黒,内側は朱の漆塗で,無地が多いが,蒔絵(まきえ)をほどこしたものもある。室町ごろ用いられた重ねの容器である食籠(じきろう)の転じたものといわれ,物見遊山などに持ち歩けるよう工夫された提(さげ)重箱とともに,江戸時代には大いに普及した。

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食器・調理器具がわかる辞典 「重箱」の解説

じゅうばこ【重箱】

方形の扁平な箱を2段、3段または5段に重ね、一番上の箱にふたをして用いる容器。正月のおせち料理、花見や運動会などの行楽などに用いる。漆器が一般的。◇「お重」「重」ともいう。

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