重水素(読み)じゅうすいそ(英語表記)heavy hydrogen

翻訳|heavy hydrogen

精選版 日本国語大辞典 「重水素」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐すいそ ヂュウ‥【重水素】

〘名〙 水素の重い同位体の一つ。記号 D または 2H 質量数二。天然に存在し、ふつうの水素の約一五〇〇分の一を占める。核融合燃料、生物体のトレーサーなどに用いられる。広く、質量数三の同位体も含めていうこともある。デューテリウム。〔原子力(1950)〕
※随筆寄席第二集(1954)〈辰野・林・徳川〉二「ウラニュームてのは、核のまわりを電子がぐるぐる幾十となくまわってる。〈略〉重水素になっても、そいつが二つか三つまわっているに過ぎない」

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デジタル大辞泉 「重水素」の意味・読み・例文・類語

じゅう‐すいそ〔ヂユウ‐〕【重水素】

水素同位体で、質量数2の水素。ジュウテリウム。デューテリウム。→軽水素

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改訂新版 世界大百科事典 「重水素」の意味・わかりやすい解説

重水素 (じゅうすいそ)
heavy hydrogen

水素には質量数1(原子量1.0079)のふつうの水素1Hのほか,質量数2の同位体2H(原子量2.0158)および3の同位体3Hがある。これらは,ふつうの水素のそれぞれ約2倍,3倍の比重をもつ著しく重い同位体であるから,重水素と呼ばれる。しかし通常はそのうち安定で広く存在する2Hを重水素あるいはジュウテリウムdeuterium(化学記号D)と呼び,不安定な放射性元素で天然に微量しか存在しない3Hは三重水素あるいはトリチウムtritium(化学記号T)と呼んでこれと区別することがある。またこれらに対し,ふつうの水素1Hを軽水素あるいはプロチウムprotiumとも呼ぶ。またDの原子核D⁺(1個の陽子と1個の中性子から成る)を重陽子あるいはジュウテロンdeuteron,Tの原子核T⁺(1個の陽子と2個の中性子から成る)を三重陽子あるいはトリトンtritonと呼び,H⁺すなわち陽子(プロトンproton)と区別する。

 ジュウテリウムは,天然の水素や水素化合物中に水素の全量に対して0.015%含まれ,重水D2Oの電気分解でD2気体として取り出される。またそれを含む重アンモニアND3,重塩化水素DCl,その他多くの化合物も得られている。一方,トリチウムは,半減期12.36年でβ崩壊するが,宇宙線による核反応で大気の上層部に絶えず生じ,これが大気中に微量に存在するヘリウムの同位体3Heの源となる。トリチウムはまた,リチウムを低速中性子で衝撃するなどの核反応によって人工的にも得られる。H,D,Tをすべて考えると,水素の分子はH2HD,D2,HT,DT,T2の各種があり,その分子量はほぼ2から6に及ぶ。ジュウテリウム,トリチウムは化学反応の機構を追跡するためのトレーサーとして利用され,またジュウテリウムはおもにその酸化物(重水)の形で原子炉の中性子減速材として大量に用いられる。
トリチウム
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化学辞典 第2版 「重水素」の解説

重水素
ジュウスイソ
heavy hydrogen

質量数2と3の水素の同位体の総称.あるいは2のものだけをいう(ジュウテリウムD,2H).この場合,3の同位体は,三重水素(トリチウムT,3H)とよばれる.単体をさすときは D2,T2,HD,HT,DTのすべてを含むことがある.D2 は重水(酸化ジュウテリウム)の電解,または重水と金属ナトリウムの反応で得られる.無色,無臭,可燃性の気体.沸点23.3097 K(H220.39 K).臨界温度38.34 K(H233.18 K).三重点18.73 K.第一イオン化エネルギー14.4666 eV.Dは1931年,H.C. Urey(ユーリー)により,スペクトル分析によって発見された.ほかの単体の沸点はHD 22.13 K,T225.04 K.化学的性質は H2 とほとんど同じであるが,質量の差のため反応速度などに多少の差が現れる(同位体効果).D,Tともにトレーサーとして化学,生物実験に使用される.水素爆弾など核融合反応にも用いられる.トリチウムは夜光時計・軍用コンパスの文字盤,出口・非常口の表示などに用いられる.[CAS 7782-39-0:D2][CAS 10028-17-8:T2][CAS 13983-20-5:HD]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「重水素」の意味・わかりやすい解説

重水素
じゅうすいそ
heavy hydrogen

広義には水素の重い同位体(アイソトープ)の総称。狭義にはジューテリウムのこと。水素には質量数 1の普通の水素(H,存在比 99.9844)のほかに質量数 2の同位体(Dまたは 2H,ジューテリウム,存在比 0.0156)と質量数 3の同位体(Tまたは 3H,トリチウム,存在比 10-18)がある。ジューテリウムの単体は D2,分子量 4.032,無色無臭の可燃性気体,沸点-249.5℃,凝固点-254.5℃(121mmHg)である。水素爆弾の材料,トレーサー重水として原子炉減速材に使う。トリチウムは,三重水素ともいい,放射性をもち,半減期 12.32年。原子核破壊でつくられ,トレーサーとして使う。

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百科事典マイペディア 「重水素」の意味・わかりやすい解説

重水素【じゅうすいそ】

水素の同位体のうち質量数2のジュウテリウム(D,2H)をいう。質量数3のトリチウム(T,3H)を含めることもある。
→関連項目核融合重水重陽子

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「重水素」の意味・わかりやすい解説

重水素
じゅうすいそ

ジュウテリウム

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栄養・生化学辞典 「重水素」の解説

重水素

 →ジュウテリウム

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