(読み)ショウ

デジタル大辞泉 「醤」の意味・読み・例文・類語

しょう【醤】[漢字項目]

人名用漢字] [音]ショウ(シャウ)(漢) [訓]ひしお
肉の塩辛。「肉醤
調味料一種。「醤油
[補説]人名用漢字表(戸籍法)の字体は「醬」。
[難読]醤蝦あみ

ひ‐しお〔‐しほ〕【×醤/×醢】

(醤)
㋐大豆と小麦で作ったこうじ食塩水をまぜて造る味噌に似た食品。なめ味噌にしたり調味料にしたりする。ひしお味噌。
㋑醤油のもろみの、しぼる前のもの。
(醢)魚・鳥などの肉の塩漬けししびしお。

しょう〔シヤウ〕【×醤】

麦・こうじ・豆・米などをねかせてから、塩をまぜて作った調味料ないし嘗物なめもの。味噌・醤油の原体。ひしお。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「醤」の意味・わかりやすい解説


ひしお

古代の発酵調味料、現代では主としてなめみその一種である醤みそのことをいう。古代の醤は、魚、獣肉、大豆などに醤(こうじ)と塩を加えて熟成し、発酵させた塩辛風のもので、そのまま食用にしたり、塩とともに調味料として重用された。古くから日本でもつくられ、奈良時代には庶民の間にも普及していたとみられる。朝廷では大膳職(だいぜんしき)の主醤(ひしおのつかさ)が醤、豉(くき)、未醤(みそ)などの製造をつかさどり、平安京の東市に醤店(ひしおだな)があり、醤を市販するまでになっていた。また大陸からは唐(から)醤、高麗(こま)醤などが伝来している。中国魏(ぎ)の賈思勰(かしきょう)編『斉民要術(せいみんようじゅつ)』(6世紀)の巻8の上には醤の作り方が記され、黒豆を原料とするものを醤(しょう)、牛・羊・鹿(しか)・兎(うさぎ)などの肉を用いるものを肉醤(ししびしお)、鯉(こい)などの魚を用いるものを魚醤(ぎょしょう)としている。また蝦(えび)・蟹(かに)などを原料としてもつくれるという。なお穀醤(こくびしお)は、豆類のほかにヒエアワ、米なども用いられる。このほか野菜、果実野草海藻などを塩、酢、粕(かす)などで漬ける草(くさ)醤もあったが、これは漬物祖型である。

 醤は現在も日本や中国をはじめ東南アジア一帯で用いられている。日本と中国では大豆の醤が発達したが、東南アジアではニョクマン(ヌクマム)などの魚醤が中心である。大豆の醤はその後、みそ、しょうゆへと変化した。なめみその醤は俗に醤みそとよばれ、大豆、麦、麹、塩を加えて6か月以上発酵させ、もろみの状態にしたものである。しょうゆは、このもろみを絞ったものであるが、醤みそ用にはその目的で別につくられる。ご飯や生野菜に添えたり、和(あ)え物として用いる。魚醤は各国で魚しょうゆに発展した。

[河野友美・山口米子]

『松本忠久著『平安時代の醤油を味わう』(2006・新風舎)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「醤」の意味・わかりやすい解説


ひしお

味噌,醤油などの原形。古代中国で開発された調味料で,日本には奈良時代に伝わった。当時の『大宝令』のなかに醤類を司る主醤という職がみられる。さらに平安時代の『延喜式』 (律令の施行細則) には醤の醸造の例として,豆3石,麹にする米1斗5升,もち米4升3合2摂,小麦,酒ともに1斗5升,塩1石5斗から醤1石5斗を得ると記している。これは豆醤の類で,前代に主醤で造ったものと同じと思われる。また中国では周代に干し肉を切り麹と塩と混ぜ,酒を注いで瓶に密蔵した肉醤 (ししびしお) があった。これは牛,豚などの肉につけて食べたり,焼くとき塗ったりしたものらしい。豆醤は植物性の原料で造った一種の味噌であるが,獣肉や魚肉や内臓を食塩と混ぜ長時間発酵させたものが,嘗味噌類のような形で残り,塩辛や秋田地方のしょっつるがこれに属する。

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百科事典マイペディア 「醤」の意味・わかりやすい解説

醤【ひしお】

なめみその一種。味噌や醤油の祖型。炒(い)ってひき割ったダイズと水に浸した小麦で麹(こうじ)を作り,これに食塩水を入れ,さらに塩漬したナスなどを加えて仕込み,数ヵ月の熟成期間を経て食用。なお古くは魚鳥の肉の塩漬,塩辛も醤と称した。
→関連項目しょうゆ(醤油)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「醤」の解説


ひしお

塩蔵発酵食品として古代から作られており,米・麦・大豆などからの穀醤,鳥獣から作る肉醤,果実や海草から作る草醤があった。穀醤は味噌・醤油の原形であり,固形分から味噌が,液汁として醤油が作られるようになるのは室町時代以降とされる。東南アジアでは魚醤が調味料として広く用いられているが,日本では穀醤が主流。今でも麦と大豆を蒸し,麹とまぜて発酵させて作り,冬季のおかずとする。

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