酢酸セルロース(読み)サクサンセルロース

化学辞典 第2版 「酢酸セルロース」の解説

酢酸セルロース
サクサンセルロース
cellulose acetate

アセチルセルロースともいう.セルロース酢酸エステルで,[C6H7O2(OH)3-m(OCOCH3)m]n(m = 0~3)で示される工業的にも重要なセルロース有機酸エステルである.セルロースのアセチル化は適当な触媒の存在下で,セルロースに無水酢酸,塩化アセチル,ケテンなどを反応させる.工業的にはリンターパルプ酢酸で前処理し,硫酸触媒で無水酢酸を作用させ,次式のように三(第一次)酢酸セルロースを得る.

  C6H7O2(OH)3 + 3(CH3CO)2O

   → C6H7O2(CH3COO)3 + 3CH3COOH

次にこれを適度にけん化熟成し,二(第二次)酢酸セルロースを得る.酢酸セルロースの酢化度(結合しているアセチル基を酢酸換算した重量%),アセチル含有量(%)は,三酢酸セルロースの場合,酢化度62.5%,アセチル含有量44.8% である.置換度(グルコース単位当たり3個あるヒドロキシ基のうち,エーテル化されたものの数)と置換基の分布によって酢酸セルロースの性質は異なり,吸湿性は酢化度の増加とともに減少し,熱可塑性は酢化度53% のものがもっともよい.さらに,三酢酸セルロースはジクロロメタン,クロロホルムに可溶であり,酢化度の低下とともに極性溶媒への溶解性が増し,アセトン,酢酸メチル,ニトロメタン,ジオキサンなどに可溶になる.用途は,アセテート繊維アセテートフィルムプラスチック,塗料などに用いられ,とくにフィルムは難燃性で,硝酸セルロースのかわりに写真フィルムとして使用されている.

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精選版 日本国語大辞典 「酢酸セルロース」の意味・読み・例文・類語

さくさん‐セルロース【酢酸セルロース】

〘名〙 (セルロースはcellulose) セルロースの酢酸エステル。工業的にはセルロースを無水酢酸で処理して得られる。反応した酢酸の割合によってできあがったものの性質は非常に変化に富む。人絹(アセテート人絹)、フィルム、ラッカーなどに用いる。酢酸繊維素。アセチルセルロース。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「酢酸セルロース」の意味・わかりやすい解説

酢酸セルロース
さくさんセルロース
cellulose acetate

アセチルセルロースともいう。セルロースの分子中の水酸基をアセチル化したもの。アセチル化の程度によりプラスチック,フィルムの原料になる。また,紡糸したものはアセテート繊維 (アセチル化の程度の大きいもの) として衣料,たばこフィルタなどに使用される。

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デジタル大辞泉 「酢酸セルロース」の意味・読み・例文・類語

さくさん‐セルロース【酢酸セルロース】

アセチルセルロース

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