(読み)えう

精選版 日本国語大辞典 「酔」の意味・読み・例文・類語

え・う ゑふ【酔】

〘自ハ四〙 (「よう(酔)」の古形)
① 酒によう。
古事記(712)中・歌謡「須須許理(すすこり)が 醸(か)みし御酒(みき)に 我恵比(ヱヒ)にけり 事無酒(ことなぐし) 笑酒(ゑぐし)に 我恵比(ヱヒ)にけり」
② (舟、車、駕籠(かご)などに乗り、その動揺によって)気分が悪くなる。
※高遠集(1011‐13頃)「ころ舟にゑふ人ありと聞きつるはもたひに泊るけにやあるらん」
③ (魚肉やきのこを食べて)中毒する。
※俳諧・田舎の句合(1680)二三番「鯖(さば)にこりず鰹(かつを)にこりず雪の鰒(ふぐ)〈略〉鰒数奇(ふぐずき)さばにあてられ、鰹にえひての上暫く用捨有べし」
④ うっとりする。心を奪われる。
※竹取(9C末‐10C初)「猛く思ひつる宮つこまろも、物にゑひたる心地して、うつ伏しに伏せり」
⑤ 迷う。惑う。
正法眼蔵(1231‐53)行持下「祖師遠孫と称するともがらも、楚国の至愚にゑふて、玉石いまだわきまへず、経師論師も斉肩すべきとおもへり」

よ・う よふ【酔】

〘自ワ五(ハ四)〙 (「えう(酔)」の変化した語)
① 酒を飲んで酒気が全身にまわる。酒を飲んで正常な状態でなくなる。酒を飲んで正気を失う。酩酊する。〔文明本節用集(室町中)〕
浮世草子・好色二代男(1684)八「酔(ヨヲ)ふた㒵もせず見へける」
② 魚肉・キノコなどで中毒する。〔日葡辞書(1603‐04)〕
③ 船や車など乗物に乗って、揺られて目まいがしたり吐き気を催したりして、気持が悪くなる。
※交隣須知(18C中か)一「水疾 トカイ シテキテ フネニ ヨウテ シノウト イタシマシタ」
④ 圧倒されて気持が悪くなる。のぼせたようになる。
※日葡辞書(1603‐04)「チニ yô(ヨウ)
恋慕ながし(1898)〈小栗風葉〉二三「人込に酔(ヨ)ったとでも思ったであらう」
⑤ 魅力的なものに心を奪われる。魅せられる。うっとりする。また、正常な判断力、平静な気持を失う。
※妾の半生涯(1904)〈福田英子〉九「両親ともに恰も妾(せふ)虚名に酔へる時なりしかば」

えい ゑひ【酔】

〘名〙 (動詞「えう(酔)」の連用形名詞化)
① 酒、乗物などに酔うこと。よい。
※宇津保(970‐999頃)祭の使「としごろ〈略〉きこえんと思ふこと、こよひゑひのついでにきこえむ」
② ある物事に心を奪われて、本心を失うこと。心がくらむこと。よい。
※観智院本三宝絵(984)中「つひに無明の酔をさますべし」
※正治二度百首(1200)釈教「さとりえぬ浮世のゑひをさめぬ身にかりの情は誰れすすむとも〈源家長〉」

よい よひ【酔】

〘名〙 (動詞「よう(酔)」の連用形の名詞化) 酒などに酔うこと。酔ったこと。また、その状態。えい
※天草本伊曾保(1593)女人と、大酒を飲む夫の事「yoino(ヨイノ) サメガタニ ヲヨウデ」

えわ・す ゑはす【酔】

〘他サ四〙 酔わせる。人を酔うようにする。
※宇津保(970‐999頃)楼上上「いみじう笑ひ給ひて〈略〉物もおぼえずえはし給へり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「酔」の意味・読み・例文・類語

すい【酔〔醉〕】[漢字項目]

常用漢字] [音]スイ(呉)(漢) [訓]よう
酒によう。「酔漢酔眼酔客酔態酔余宿酔泥酔微酔乱酔
意識をなくする。「麻酔
心を奪われる。「心酔陶酔
[難読]馬酔木あしび・あせび

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android