酒茶論(読み)しゅちゃろん

精選版 日本国語大辞典 「酒茶論」の意味・読み・例文・類語

しゅちゃろん【酒茶論】

茶書。一巻。美濃乙津寺の僧、蘭叔の著。天正四年(一五七六)の成立。酒の徳と茶の徳との優劣について漢文体で論じたもの。
[補注]先蹤としては唐の王敷撰「茶酒論」があり、直接には大永五年(一五二五)仁岫作「梅松論」の影響を受けて成立。後の御伽草子「酒茶論」や「餠酒歌合」「酒飯論」「御茶物語」などに多大な影響を及ぼした。

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改訂新版 世界大百科事典 「酒茶論」の意味・わかりやすい解説

酒茶論 (しゅちゃろん)

異類のものが互いに優劣を争う戯作文学の一類型で,飲みものの雄である酒(上戸)と茶(下戸)の論争である。古くは中国晩唐の作と推定される《茶酒論》がある。日本では同名の作品が2編ある。一つは岐阜乙津寺の禅僧蘭叔玄秀(らんしゆくげんしゆう)が1576年(天正4)にした《酒茶論》で,漢文体2000字あまりの作品。第2は作者不明の仮名草子《酒茶論》1巻(17世紀前期成立)である。前者は上戸の忘憂君と下戸の滌煩子が中国の故事を引いて論争し,最後は閑人が登場して〈お酒はお酒,お茶はお茶〉と引きわける。後者謡曲の世界をふまえて酒茶の合戦譚となっている。同類の文学に《酒飯論》《酒餅論》がある。
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世界大百科事典(旧版)内の酒茶論の言及

【茶酒論】より

…短編ながら,日本の文芸にも少なからぬ影響を及ぼした。その一つ,《酒茶論》は,妙心寺53世蘭叔玄秀の作。花間に筵を開いて酒を飲む忘憂君(ぼうゆうくん)と,松辺に茶を喫する滌煩子(じようはんし)とが,交互にその徳を述べ論じ合い,勝負なしでめでたく納まるという内容。…

※「酒茶論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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