酉陽雑俎
ゆうようざっそ
中国、唐代の随筆。段成式(だんせいしき)著。前集20巻、続集10巻。860年ごろ成立。書名は湖南の小酉山の下に、1000巻の書を隠した穴があるという伝説による。宰相で蔵書家であった父をもち、宮中の図書係である校書郎の職について、無類の読書家であった著者が、その該博な知識を駆使して、奇事異談から衣食風習、医学、宗教、動植物に至るまで、世事万端についての見聞、考証を記したもの。なかには非現実的な記事も見受けられ、前集にある「盗侠篇(へん)」などはほとんど小説といえる内容も含むが、多くは唐代の社会風俗を知るための貴重な記録である。
[今西凱夫]
『今村与志雄訳注『酉陽雑俎』全五巻(平凡社・東洋文庫)』
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酉陽雑俎
ゆうようざっそ
You-yang za-zu
中国,晩唐の随筆集。段成式の著。 20巻,続集 10巻。成立年未詳。書物,衣食,風習,動植物,医学,宗教,人事など百般の事柄について考証,見聞などを記したもの。著者は温庭 筠と親しく,のち太常少卿に進んだが,家に蔵書が多く,またかつて秘書省校書郎をつとめ,宮中の秘書を読む機会があり,それに基づく広い知識によってこの書を成した。唐代の社会,文学,歴史を研究するうえで貴重な資料となっており,なかには荒唐な記事も混るが,それはそれで小説的興味を含んでいる。
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酉陽雑俎【ゆうようざっそ】
中国,晩唐の異聞雑記集。20巻,続集10巻。著者は段成式〔803?-863〕。著者は父の縁故で宮廷内の稀覯(きこう)書・珍書を読んだため広い視野をもって,怪異,珍書,衣食風習,医学,仏教,道教,動植物などを記す。唐代社会を知る上での貴重な記事が多い。
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ゆうようざっそ イウヤウザッソ【酉陽雑俎】
中国唐代の子部の小説類の一つ。二〇巻。続集一〇巻。段成式撰。八六〇年頃成立。内容は、仙仏人鬼から、動植物に至るまでの広範な怪事異聞を、三六の
部立に分けて随筆風に叙述したもの。
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デジタル大辞泉
「酉陽雑俎」の意味・読み・例文・類語
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ゆうようざっそ【酉陽雑俎 Yŏu yáng zá zǔ】
中国,晩唐時代,段成式(803?‐863)の異聞雑記集。前集20巻,後集10巻。段氏は唐代の名家で,父の段文昌は穆宗(ぼくそう)の宰相をつとめた。この書は,段成式自身の見聞を核とし,さまざまな異聞や博物的知識を集大成して成る。その範囲は,中国知識人の正統的な知識のほか,道教や仏教に及び,地域的にはインドやペルシアまで含む。〈雑俎〉と名付けられているように〈ごった煮〉的な内容で,強い主張をもった作品ではないが,特に〈諾皐(だくこう)記〉〈支諾皐〉などの編は,唐末社会の中での説話のあり方を知るためにも重要である。
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世界大百科事典内の酉陽雑俎の言及
【米福粟福】より
…厳密には,婚姻譚を含む後半部に共通点を見いだすというべきである。継子いじめ譚最古の文献《酉陽雑俎》に描かれる葉限と継母の対立抗争は,この話型に似通うものである。《住吉物語》《落窪物語》も同系統である。…
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