都市同盟(読み)トシドウメイ

デジタル大辞泉 「都市同盟」の意味・読み・例文・類語

とし‐どうめい【都市同盟】

12~14世紀にかけて、中世ヨーロッパの諸都市が皇帝や封建諸侯の圧力に対抗して、自由と商業的利益を守るために結成した同盟。北イタリアロンバルディア同盟ドイツライン都市同盟ハンザ同盟など。

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精選版 日本国語大辞典 「都市同盟」の意味・読み・例文・類語

とし‐どうめい【都市同盟】

〘名〙 中世ヨーロッパ、特にドイツ・イタリアの都市の同盟。皇帝や封建諸侯の支配に対抗するためのもの。ロンバルディア同盟、ライン同盟ハンザ同盟が有名。中央集権制の進展に伴い衰退。特に地理上の発見で経済的打撃を受けて、一七世紀後半に解体した。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「都市同盟」の解説

都市同盟(としどうめい)

①〔古代〕sympoliteia ヘレニズム時代に重要な役割を果たし,ローマ時代に地方自治体として存続したギリシア諸国家の同盟。都市や部族が結合して単一のポリスよりも大きな結合体をつくったとき,それはシュンポリテイアと呼ばれて,連合国家のようなものとなった。代表的なものはアイトリア同盟アカイア同盟である。前者は前4世紀に形成され,マケドニアとの敵対関係からローマと結んだ。後者は前3世紀初めに形成されて反マケドニア勢力となったが,スパルタと反目して親マケドニアへと,その立場を変えた。いずれも前2世紀にローマに征服されて独立を失ったが,同盟としての形は残った。

②〔中世〕Städtebund 中世後期ドイツに多くみられた都市間同盟。その典型はハンザ同盟で,政治権力分立状況に置かれたドイツ諸都市の自衛手段である。皇帝権衰退開始期の12世紀中葉の北イタリア都市間にもロンバルディア同盟がつくられたが,ドイツでは1226年ライン沿岸数都市の同盟が最初(マインツ大司教など封建諸侯による過重な関税徴収への対抗。マインツ,ヴォルムス,シュパイアーほか。31年まで)。のちライン都市同盟(54~57年)はライン川沿岸,ドイツ中・西部,スイス地方の諸都市70を含み,武装船舶を所有,バーゼル‐コブレンツ間に加盟都市の商船航行のみを認めた。さらにのちライン・シュヴァーベン都市同盟(1376~88年)も結成。ハンザは,13世紀半ばから14世紀半ばにかけ,商人団体から都市同盟へと転換した。

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改訂新版 世界大百科事典 「都市同盟」の意味・わかりやすい解説

都市同盟 (としどうめい)
Städtebund[ドイツ]

中世,とりわけ13~15世紀に諸侯や騎士に対抗して自分たちの自由特権を擁護する目的で結成された諸都市の連合。なかにはカール4世に対しての場合(シュワーベン都市同盟)のように国王ないし皇帝とその禁令に対抗するものもあった。いずれにせよ強力な中央権力の欠如という状況のなかで,諸都市の自助組織として登場したもので,その理由からしてもイタリアやドイツに多かった。領邦諸侯の遠心的分裂傾向に対抗して帝国に統一をもたらそうとしたものという評価もあるが,結局長続きせずして解体し,台頭する領邦国家に屈せざるをえなかった。有名なのは,フリードリヒ1世帝に対抗した1167年のロンバルディア都市同盟,領邦的分立の克服を目ざした1254年と1381年のライン都市同盟金印勅書の禁令にもかかわらず結集した1376年のシュワーベン都市同盟などである。最も重要でかつ例外的に長期にわたって活動したのが,14世紀なかばに都市同盟の性格を明確にしたハンザ同盟であったと言えよう。なお,古代ギリシア・ローマ時代にも,シュンポリテイアsympoliteiaとかコイノンkoinonとよばれる都市国家の連合体が存在し,アイトリア同盟アカイア同盟がその代表的なものであった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「都市同盟」の意味・わかりやすい解説

都市同盟
としどうめい
Städtebund; city league

古代ギリシア・ローマにもみられるが,一般には中世後期のイタリア,ドイツの諸都市間に結ばれた同盟。商業の復活に伴う都市の勃興は,皇帝,封建諸侯と都市市民の対立抗争を生んだ。この過程で市民の自立意識が強まり,利害を共通する都市間の結束が始るが,12世紀後半の北イタリアにおける「ロンバルディア同盟」の成立は民族的契機を内蔵している点で重要である。神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世 (赤髯王) のイタリア侵略に反抗し,24都市が同盟を結び,その市民軍は 1176年皇帝軍を撃破した。この勝利が北イタリア諸都市の自治都市への発展を促進した。ドイツの都市同盟結成の動きは 13世紀に入り急速に進んだ。最初は交易の安全を求める経済的理由からの都市同盟であったが,大空位時代の出現によって領邦国家の分極化に対抗し,全ドイツの政治的統一を志向する都市同盟が出現した。 1254年成立の「ライン都市同盟」がそれで,マインツ,ウォルムス,ケルンなど百余の都市が参加し,同盟会議をもち,帝国の和平を求めた。4年間で解体したのちもその理念は継承され,14世紀後半にはシュワーベン同盟や新ライン同盟を生んだが,領邦君主の支配に屈した。

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百科事典マイペディア 「都市同盟」の意味・わかりやすい解説

都市同盟【としどうめい】

中世ヨーロッパ,特にドイツやイタリアにおける都市相互間の同盟。弱体な中央権力から保護を期待し得ない諸都市の自衛手段で,同時に交易圏の拡大と商業活動の独占をめざし,強力な軍事力をもっていた。ロンバルディア都市同盟ライン都市同盟シュワーベン都市同盟ハンザ同盟等が都市同盟の典型であるが,台頭する領邦国家に屈して長続きはしなかった。

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旺文社世界史事典 三訂版 「都市同盟」の解説

都市同盟
としどうめい
Städtebund

中世末期のヨーロッパ,特にドイツ・イタリアにみられた都市間の同盟
11世紀から急激に発展した中世都市は,皇帝や国王・封建諸侯の圧迫をはねかえし,また商業的利益・航海の安全のために数多くの同盟を結び,また連合して皇帝・諸侯に武力で対抗した。12世紀のイタリアのロンバルディア同盟,ドイツのライン都市同盟,14世紀に最盛であったハンザ同盟などが有名。しかし,西ヨーロッパ諸国で中央集権が進むにつれて,都市の主権国家への従属性が強まり,しだいに衰退した。

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