都市同盟(古代)(読み)としどうめい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「都市同盟(古代)」の意味・わかりやすい解説

都市同盟(古代)
としどうめい

古代ギリシアローマにおいて、都市国家を主体とし、しばしば部族国家をも交えて形成された同盟

[清永昭次]

ギリシア

ギリシアの都市同盟は、大別して軍事的攻守同盟であるシンマキアSymmachiaと、連邦であるシンポリテイアSympoliteiaとに分かれる。前者の例としては、ペロポネソス同盟(前550ころ)、デロス同盟(前477)、第2回アテネ海上同盟(前377)、コリント同盟ヘラス連盟、前337)など、後者の例としては、アイトリア同盟(前367ころ)、アカイア同盟(前280)のほか、ボイオティア同盟(前6世紀~前146年、それ以後は主として宗教上の連合体)、テッサリア同盟(前6世紀~ローマ帝政期)、小アジアのリキアLykia同盟(前4世紀~ローマ帝政期)などがあった。シンマキアでは、加盟都市国家(ポリス)ないし部族国家(エトノスethonos)を統合するより上位の国家は存在しなかったが、シンポリテイアでは、加盟した都市国家、部族国家のそれぞれは、自治権を保持しながら、同時に連邦国家の構成員となっていた。これらのギリシアの都市同盟は、その構成員の主体をなしたものが単なる都市ではなくて、それ自体国家であり、しかも、エトノスからポリスを経て、さらにより高次の政治的統合を指向する国家形態の発展のなかで生まれたという点で、ヨーロッパ中世の都市同盟とは基本的に性格を異にしていた。なお、ギリシア各地のアンフィクティオニア(amphiktyonia隣保同盟)なども、一種の都市同盟とみることができる。

[清永昭次]

ローマ

ローマにおいては、ラテン人の都市国家およびエトルリア人の主要な12の都市国家が、それぞれに都市同盟をつくった。前者は前6世紀以前から存在した。前6世紀にローマが同盟の主導権を握ったが、前500年ごろからローマは除外されるに至り、さらに前338年、同盟はローマに屈服して政治的性格を奪われ、それ以後は宗教的連合体となった。また、後者は前6世紀前半に成立したが、前500年ごろから衰退に向かい、前3世紀末までにローマの手で解体された。

[清永昭次]

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