郷挙里選の法(読み)きょうきょりせんのほう

改訂新版 世界大百科事典 「郷挙里選の法」の意味・わかりやすい解説

郷挙里選の法 (きょうきょりせんのほう)

中国,漢代の官吏登用制度をいう。郷里における人物評価にもとづいて中央政府に官僚候補者として推薦するものである。郡国の守相が郷里における孝悌廉潔の徳行にすぐれた人物を推挙する孝廉科がその事例である。毎年人口20万につき1人の割合とされた。前漢における孝廉科の選挙はきわめてまれであり,後漢に至り儒教の浸透とともに孝廉による登用が盛んに行われた。孝廉に推挙されると,まず郎中(年収は比300石)に任命され,ついで県令・謁者・尚書侍郎(いずれも400石)などに転じ,さらに功労により高官へと昇進していく。しかし,州・郡・県の地方官衙の従事掾史えんし)が豪族によって独占され,本来の趣旨に反して孝廉もこれら属吏に在任しているものから推薦されるようになった。後漢末期の混乱状況によって郷挙里選は実施が不可能となり,これに代わって九品官人法(または九品中正法ともいう)が制定された。
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世界大百科事典(旧版)内の郷挙里選の法の言及

【選挙】より

…近代以前の中国で官人を登用する制度の総称。漢代に郷挙里選の法といって,地方官が在地の徳義にすぐれた者を選び朝廷に推薦する制度からこの名がおこった。貴族制の発達した六朝では,家格を按じて推挙をつかさどる中正の官(九品官人法)が大きな役割を果たしたが,隋・唐以後学科試験の科挙が中心となり,高官の子孫の門蔭出身を圧するに至った。…

※「郷挙里選の法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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