郵便葉書(読み)ユウビンハガキ(英語表記)postcard

翻訳|postcard

デジタル大辞泉 「郵便葉書」の意味・読み・例文・類語

ゆうびん‐はがき〔イウビン‐〕【郵便葉書】

日本郵便株式会社が内国郵便約款で規格・様式を定め、表面に郵便料金を表す証票を印刷して発行する郵便用紙。これを基準とする私製のものに切手をはって出すことも認められている。第二種郵便物に属する。郵政葉書

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「郵便葉書」の意味・わかりやすい解説

郵便葉書
ゆうびんはがき
postcard

郵便物の一種。世界で初めて郵便葉書を発行したのは、オーストリアハンガリー帝国で、1869年10月のことである。日本では、郵便事業創業2年後の1873年(明治6)12月に初めて発行された。

[山口 修・小林正義]

種類と大きさ

郵便葉書は、郵便法(昭和22年法律165号)で第2種郵便物と定められているもので、これには通常葉書往復葉書の2種類がある。以前は小包葉書があったが、2003年(平成15)4月販売中止となった。通常葉書は、以前は郵政官署が規格、様式を定めて発行していたため、官製葉書ともよばれていた。2007年10月の郵政民営化以降は、郵便事業株式会社(現、日本郵便)が「内国郵便約款」でその規格および様式を定めて発行している。表面の左上部に料額印面(切手にあたる部分)が印刷されており、料金は全国均一である。また、通常葉書の規格、様式を標準として民間で作製することも認められている。これは私製葉書とよばれ、使用する場合は、料額に相当する郵便切手を貼付(ちょうふ)する必要がある。郵便葉書の大きさは、通常葉書、往復葉書の往信部、返信部は、ともに縦14~15.4センチメートル(以下センチと省略)、横9~10.7センチで、往復葉書は、往信部と返信部とを横に連続したものである。小包葉書は、縦12.4センチ、横15.5センチ、折り畳み寸法縦12.4センチ、横7センチで、その上部に小包郵便物に結び付けるため、針金がつけてあった。郵便葉書には内国用と国際用の区別がある。国際用の葉書は、かつて船便用の万国郵便連合葉書があったが、利用者の用途の変化にあわせ1988年(昭和63)に国際郵便葉書と改称し、船便用と航空便用が発行された。料金は内国同様、各国あて均一料金である。

 日本で葉書が最初に発行されたのは、次のとおりである。(1)通常葉書 1873年(明治6)12月1日 (2)往復葉書 1885年(明治18)1月1日 (3)小包葉書 1951年(昭和26)6月1日 (4)万国郵便連合葉書(現在の国際郵便葉書の前身) 1877年(明治10)11月20日。

 このほか、記念のため、あるいは行事にちなんで発行されるもの、特別の目的、あるいは宣伝のために発行される特殊葉書がある。当初、葉書は官製に限られていたが、1900年(明治33)10月1日に旧郵便法が施行されたとき私製葉書が認められた。

[山口 修・小林正義]

記念葉書・特殊葉書

記念葉書、特殊葉書は、1902年6月、万国郵便連合(UPU)加盟25周年記念式典に際し、初めて記念の絵葉書が発行された。こうした官製の記念絵葉書は昭和中期までしばしば発行され、1906年には空前の絵葉書ブームをよんだ。1949年(昭和24)12月1日にお年玉つき年賀葉書が発行され、年賀状といえば、お年玉つき年賀葉書が大半を占めることになった。お年玉つき年賀葉書は記念葉書と区別し、特殊葉書とよばれる。1982年から、寄付金つき年賀葉書の裏面に美しい図案を刷った絵入葉書が発行されている。翌年には、絵入葉書に地方版が登場した。暑中見舞用の葉書も1950年から発行された。暑中見舞用は当初から絵入りで、1986年からはお年玉つき年賀葉書と同様に、くじつきとなり、「かもめーる」と愛称された(2021年3月廃止)。社会福祉に寄与するため、1958年9月15日に「としよりの日」(現在の「敬老の日」)の葉書が発行されたが、1991年(平成3)からは、「はあとめーる」とよばれた(2003年度以降の発行は中止)。1976年4月からは、身体障害者福祉強調運動にちなむ葉書が発行され、一般に発売されるとともに重度(1級、2級)の身体障害者および知的障害者(A、1度、2度)のうちの希望者に1人20枚が贈呈されるようになった。この葉書には、目の不自由な人に葉書の表裏、上下がわかるよう、表面左下部に半円形のくぼみが入った種類がある。当初の葉書の料額印面に描かれた図案から「青い鳥郵便葉書」とよばれる。広告つき葉書は、表面の下部に広告を施し、その広告主の負担によって売価を低減したもので、1981年7月から発行が開始され、愛称を「エコーはがき」と名づけられた。この葉書は、販売地域によって全国版(および準全国版)と地方版に分けられている。1985年4月から、各地の代表的な風景などを印刷し、その印刷に要する経費を勘案した売価で発売されている。これを絵入り葉書とよんでいるが、いわゆる絵葉書で、通常葉書より高額である。絵入り葉書は、国際科学技術博覧会(科学万博)にちなんで、当時の郵政官署であった郵政省から発行(1985年7月16日)された例もある。現在発行されているものは、日本郵便の地方支社が製作発行する観光絵葉書が多い。

[山口 修・小林正義]

国際郵便葉書

外国あての国際郵便葉書は、1877年(明治10)11月20日、日本がUPUに加盟した5か月後に発行されたのが最初である。宛先(あてさき)によって料金が異なり、3銭、5銭、6銭の3種がつくられ、「356」葉書とよばれた。様式は、内国用の葉書と同じで縦長であったが、1879年から横型になり、UPUの名称と同じくフランス語でCarte Postalと表示するとともに、万国郵便連合端書と表示されていた。日本語表示が葉書でなく、「端書」であるのも特徴である。これが葉書に統一されたのは1912年である。1988年(昭和63)に国際郵便葉書が発行されたときから、内国用の絵入り葉書と同様、図、絵画、写真等を印刷した葉書が発行できることになった。現在、日本郵便が発行する国際郵便葉書は、エアメール(航空便)専用のもので、縦9~12センチ、横14~23.5センチ、表面の右上部に料額印面が印刷してある。表面の上部中央に英語で「Postcard」の文字を表示し、表面には航空扱いのものには「Air mail」、航空扱いとしないものには「Surface」の文字を表示する。

 なお、書き損じた日本郵便発行の葉書は、手数料を払い交換することができる。

[山口 修・小林正義]

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改訂新版 世界大百科事典 「郵便葉書」の意味・わかりやすい解説

郵便葉書 (ゆうびんはがき)

日本の郵便はがきは〈郵便法〉上第二種郵便物として規定されており,通常はがき,往復はがきおよび小包はがきの3種類がある。1994年1月4日より通常はがきは1枚50円,往復はがきは100円,小包はがきは50円となっている。このほか,暑中見舞はがき,選挙はがき,お年玉つき郵便はがき,広告つきはがき,記念はがき等特殊はがきを発行している。私製はがきも小包はがき以外は,郵政省発行の官製はがきに準じ,次のとおり規格が定められている。通常はがきは長辺14~15.4cm,短辺9~10.7cm,重量2~6gで〈郵便はがき〉またはこれに相当する表示,往復はがきは長辺18~21.4cm,短辺14~15.4cm,重量4~12gで〈郵便往復はがき〉またはこれに相当する表示をすること。両者に共通しているのは,官製はがきと同等以上の紙質であること,表面の色彩が白色または淡色であることを条件として私製が認められている点である。また外国向けの国際郵便はがきは各国あて均一料金制で,船便60円,航空便70円である。

 郵便はがきは日常の簡易通信に供するために考えられたもので,考案者はウィーンの陸軍大学の経済学担当教授ヘルマンEmanuel Hermann(1839-1902)であり,1869年封書による書状がいかに金と物と労力の浪費であるか,無封印刷郵便が認められている以上,封書でないカードで郵便を出せるように郵便法を改正すべきであると提案した。これがオーストリア郵政当局を動かし採用することとなり,69年10月オーストリア・ハンガリーが世界最初の郵便はがきを発行したのである。ところで,それ以前の65年に北ドイツ郵政庁の高等参事官であったドイツ郵便の父であり,また万国郵便連合の生みの親であるシュテファンHeinrich von Stephan(1831-97)が,ドイツ連邦諸郵政庁間の連絡会議の席上で郵便はがきを採用して郵便料金を安くすると同時にドイツ連邦内に均一料金制を実施されたいと提議しており,着想はシュテファンのほうが4年くらい早かったといえる。しかし,ドイツが実際に郵便はがきを発行したのは1年おくれの1870年でイギリスと同年である。71年ベルギー,カナダ,デンマーク,フィンランド,72年ノルウェー,スウェーデン,ロシア,73年日本,スペイン,フランス,アメリカ合衆国,74年ルクセンブルク,イタリアの順で発行された。

 日本では郵便創業の1871年(明治4)から2年後の73年12月1日,初めて郵便はがきが発行された。市内用半銭(5厘),全国用1銭の2種で,〈はがき〉の文字が料額印面中に印刷してあり,用紙も薄く質が悪いもので,今の往復はがき式に二つ折りになって,1枚目の内側に規則が次のように印刷してある。〈他見ヲ憚カラス又上包ヲ要セサル短文通ヲ低税ニテ往復ノ便宜ヲ開クヘキ為メ之ヲ各地郵便役所扱ヒ取扱所ニテ可売下事〉とあり,当時の風潮の一端ををうかがい知ることができる。77年日本の万国郵便連合加盟を期して同年11月万国郵便連合はがきを発行,85年1月初めて内国用,外国用2種類の往復はがきを発行,また1900年10月には内国用のみの封緘(ふうかん)はがきを初めて発行したが,新郵便法の実施に伴い,1947年かぎり封緘はがきは廃止となり,そのかわり51年6月から小包はがきが初めて発行された。ちなみに日本の郵便はがきという名の考案者は,当時駅逓頭(かみ)だった前島密の相談に応じた,前島の旧来の学友であり当時大蔵省紙幣寮に勤務していた青江秀であるといわれる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「郵便葉書」の意味・わかりやすい解説

郵便葉書
ゆうびんはがき
postcard

郵便法において第二種郵便物と規定されている単片の郵便物。通常葉書,往復葉書に区分され,日本郵便株式会社が規格を定めて発行する葉書のほか,一定の規格を有する私製葉書も認められている。絵葉書は私製葉書の大部分を占める。最初の葉書は 1869年オーストリアで発行され,Correspondenz-Karteと名づけられた。日本では 1873年12月1日に初めて発行され,1885年から往復葉書が発行された。また,小包郵便物の外部に添付して通信文を記載する小包葉書も発行されていた。(→郵便

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