部曲(大和王権)(読み)かきべ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「部曲(大和王権)」の意味・わかりやすい解説

部曲(大和王権)
かきべ

大和(やまと)王権豪族私有民。「かきのたみ」「うじやつこ」ともいう。「かき」は限られた区画の意味で、発展的に豪族の領有下にある民を他と区別して「かきのたみ」とよび、部民制施行により「かきべ」と称したのであろう。部曲の字は中国南北朝では私家の下僕を意味し、唐では賤民(せんみん)、新羅(しらぎ)では賤民の居住区域をさすが、これがわが国では豪族私有民の意に用いられたのである。部曲は豪族の氏(うじ)の名を負うが、物部(もののべ)や中臣(なかとみ)部は伴造(とものみやつこ)である物部氏や中臣氏の職務遂行のために設けられた部で、したがって品部(しなべ)的要素が強い。蘇我(そが)部などの非伴造系諸氏の部曲も、これらの諸氏が朝廷の各職務分野に進出する過程で領有を認められた部と推定されるから、部曲は純粋な私有民ではなく、最終的には朝廷に帰属する部としての性格を有する。部曲は646年(大化2)の改新の詔(みことのり)で廃止され公民とされたが、その後天武(てんむ)朝(673~686)まで豪族の私民的支配は継続したようである。

[加藤謙吉]

『平野邦雄著『大化前代社会組織の研究』(1969・吉川弘文館)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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