還暦(読み)カンレキ

デジタル大辞泉 「還暦」の意味・読み・例文・類語

かん‐れき〔クワン‐〕【還暦】

《60年で再び生まれた年の干支えとにかえるところから》数え年61歳のこと。また、その祝い。華甲かこう華年本卦還ほんけがえり。「還暦を迎える」
[類語]志学破瓜弱冠而立不惑知命耳順華甲古希致仕喜寿傘寿半寿米寿卒寿白寿茶寿皇寿厄年

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精選版 日本国語大辞典 「還暦」の意味・読み・例文・類語

かん‐れき クヮン‥【還暦】

〘名〙 数え年六一歳の異称。六〇年で再び生まれたときの干支(えと)に還(かえ)るところからいう。華甲。本卦(ほんけ)還り。〔音訓新聞字引(1876)〕
左千夫歌集(1920)〈伊藤左千夫〉明治四二年「還暦の祝を挙ぐ」

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改訂新版 世界大百科事典 「還暦」の意味・わかりやすい解説

還暦 (かんれき)

数え年61歳のこと。本卦(ほんけ)がえりともいう。干支(えと)で年齢を数えると,満60歳の年にふたたび元の干支に戻る。たとえば,甲子(きのえね)生れの人が60歳になると,その年がまた甲子に当たる。そこで,生まれ直すという意味をこめて赤色の衣料品などを本人へ贈り,還暦の祝いをする慣習がある。還暦,古稀喜寿米寿,白寿などの年祝を総称して算賀,賀寿,あるいは〈賀の祝い〉というが,古稀以下が中世から祝われたのに対し,還暦の祝いは近世以降の慣習である。なお,かつて60歳か61歳で隠居をする例が多かった一因は,還暦観念に基づくものであろう。また往時村落社会では,十三六十(じゆさんろくじゆう)とか十五六十と称して,13ないし15歳以上60歳までの村民が夫役に動員されることがあったが,この場合の60歳も還暦を区切りとしたものであり,さらにこれが隠居の契機ともなったものと思われる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「還暦」の意味・わかりやすい解説

還暦
かんれき

数え年61歳の称。華甲(かこう)、本卦(ほんけ)返りともいう。華甲というのは、華の字が十の字六つと一の字からなっており、甲は甲子(きのえね)の甲で歳の意である。還暦、本卦返りというのは、干支(えと)によって年齢を数えるとき、数え年61年目に、生まれ年と同じ干支に返るからである。古くは40歳から10年目ごとに年祝いをしたので60歳を祝ったが、室町時代の末ごろから61歳の還暦を祝う風がみられるようになった。親戚(しんせき)知友が祝宴を開き、贈り物をするなど全国を通じておおむね同様な習俗がみられる。香川県では、61歳の祝いは子が祝ってあげるものといい、二つの大餅(もち)を配る所と、紅白の餅に、大豆を入れた三日月形の豆餅を添えて配る所があるという。神奈川県では、昔は頭巾(ずきん)、着物、羽織、帯、足袋(たび)など赤い衣装で宮参りした。期日は11月15日の七五三の日などにした。最近は男女とも平均寿命が延びたので、還暦の祝いは以前ほど盛大にしなくなった。

[大藤時彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「還暦」の意味・わかりやすい解説

還暦
かんれき

本卦 (ほんけ) がえりともいう。数え年 61歳のこと。十干十二支による生れ年の干支 (えと) に戻る年で,古くから 61歳を隠居の年齢とし,社会人としての生活からの隠退を意味した。また,年祝いの一つで,満 60歳の誕生日を祝う長寿の賀をいう。上代に 40歳以降,10年ごとに行われた算賀の祝いを引継いだ行事で,近世に入ってから一般化された。お祝いに赤い袖なし羽織,赤い頭巾などが贈られるが,これも本卦がえりの意から,生れ変りを意味するものである。

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百科事典マイペディア 「還暦」の意味・わかりやすい解説

還暦【かんれき】

61(満60)歳に達したことを祝う儀礼。60年で再び生まれ年と同じ干支年になるのを記念したもの。本卦(ほんけ)還り,華甲(かこう)ともいう。古来行われたが,一般化したのは江戸時代。親族知人が赤い衣服を贈って祝う。近年まで,この年を境にして公職や家長の地位を退くという隠居慣行も広くみられた。→年祝

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とっさの日本語便利帳 「還暦」の解説

還暦

十干十二支(干支)で年齢を数えると、六〇年で一巡し、数え年の六一歳で最初の干支に戻る。それでこの数え年六一歳を還暦もしくは本卦(ほんけ)還りといって祝う。華甲(かこう)ともいうが、「華」の字を分解すると六つの“十”と“一”になり、「甲」は甲子(きのえね)で最初の干支であるため。再び赤ん坊に返るということで、赤い頭巾やちゃんちゃんこ、座布団などを贈る風習がある。古来日本で行われていた長寿の祝いは古稀からで、還暦が祝われるようになったのは江戸時代からである。

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普及版 字通 「還暦」の読み・字形・画数・意味

【還暦】かんれき

六十歳。

字通「還」の項目を見る

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デジタル大辞泉プラス 「還暦」の解説

還暦

セーラー万年筆株式会社の万年筆の商品名。おもに還暦祝い用。本体は3つの赤色でグラデーションを成す。

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世界大百科事典(旧版)内の還暦の言及

【年祝】より

…通過儀礼の一つ。数え年61の還暦,70の古稀,77の喜寿,88の米寿,99の白寿などの〈長寿の祝い〉を総称して賀寿,賀の祝い,あるいは算賀というが,庶民の間ではこれを年祝と呼ぶことが多い。つまり以上の〈長寿の祝い〉が年祝の典型である。…

【老人】より

…これらの特性は,中国の老隠者のイメージにも重なるが,東アフリカの年齢階梯制に典型的にみられるように,アフリカなど多くの社会では,すべての人間が世代によってまったく異なり対立する理想を順次みずからの特性として体現しており,老人の特性も他の世代の特性と対立しながら,ある人間性の理想を象徴しているのだといえよう。年齢階梯制【小田 亮】
[民俗]
 60歳以上の高齢者を一般に老人と呼ぶがこれは民俗学的にみれば61歳還暦の年祝いを契機としているといってよい。しかし労働力としての人間の世代区分からいえば,労働から引退する傾向が著しい65歳以上を老人とし,60代後半を老年初期,70代前半を老年中期,70代後半以降を老年後期とする区分もある。…

※「還暦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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