選挙制度(読み)せんきょせいど

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「選挙制度」の意味・わかりやすい解説

選挙制度
せんきょせいど

選挙を実施し,選挙の諸目的を達成するための制度的装置・取決めの総体をいう。近代の選挙制度の原則は,選挙民個人に参加権として選挙権を与え,代表者は国民全体の代表として国家機関を構成することである。これは選挙の個人人格主義と呼ばれているが,このことから選挙制度の基本原則といわれる普通選挙,平等選挙,直接選挙,秘密選挙の4大原則が出てくる。こうした原則のうえに各国の選挙制度は成立しているが,各国とも政治,社会,文化的条件の違いを背景に,また政治状況の変化を考慮して全国レベルの選挙制度を慎重に定めるようにしている。したがって,各国の選挙制度に含まれる要素は次のように多様である。 (1) 有権者地位,(2) 選挙区の設定,(3) 投票に関する取決め,(4) 単純多数決・小選挙区制以外の制度が採用されている場合には,代表の基盤とその計算方法,(5) 候補者となるための予備資格,(6) 選挙過程そのものの施行に関する行政上の取決め (選挙運動に関する諸規則を含む) ,(7) 選挙結果を受理するための取決め,および結果をめぐって紛争が生じた場合にそれを解決するための取決め。このなかで特に重要なのは,選挙区投票制度である。前者に関して諸国家の立法部選挙で採用されているのは,小選挙区単純多数決制を基盤とした直接選挙 (2回投票制もこれに含まれる) か,ある種の比例代表制 (名簿式比例代表制,大選挙区制) のいずれかである。どの制度をとるかによって政党制秩序に影響を与えることになる。単純化していえば,小選挙区制は二大政党制への傾向を助長するし,比例代表制は多党制への傾向を助長することになる。選挙区は選挙施行上の便宜的な地域区分にすぎないものであるが,議員にとっては当落に重大な関係があるので,選挙区制の基本的変更および選挙区の画定に際しては,いつでも激しい論争や政争が起ることになる。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「選挙制度」の解説

選挙制度
せんきょせいど

選挙の法的枠組みを定めた規定。日本で全国均一に制度化されたのは,1878年(明治11)の府県会規則にもとづく府県会議員選挙が最初であるが,89年2月公布の衆議院議員選挙法により,国政における本格的な選挙制度が導入された。当初は直接選挙,単記記名投票,納税資格による制限選挙(90年の府県制・郡制では府県会議員は間接選挙,99年の改正で直接選挙)を採用。1900年の選挙法改正で単記無記名,従来の小選挙区制を人口3万以上の市を独立選挙区に,郡部を大選挙区制に改訂。1919年(大正8)小選挙区制を採用し,納税資格を引き下げ(10円→3円),25年には男子の普通選挙が実現した。第2次大戦後の45年(昭和20)婦人参政権が認められた。47年には日本国憲法のもとで貴族院に代わる参議院議員や地方自治体首長の公選制が実現した。

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