適・叶(読み)かなう

精選版 日本国語大辞典 「適・叶」の意味・読み・例文・類語

かな・う かなふ【適・叶】

[1] 〘自ワ五(ハ四)〙
① ちょうどよく合う。うまくあてはまる。ある条件に適合する。
万葉(8C後)一・八「熟田津(にきたつ)に船乗りせむと月待てば潮も可奈比(カナヒ)ぬ今は漕ぎ出でな」
源氏(1001‐14頃)薄雲「院の御遺言にかなひて、うちの御後見つかうまつり給こと」
宝物集(1179頃)「永保雅忠の薬もかなはず」
② 思うとおりになる。望んでいたことが成就する。
(イ) 「心にかなう」の形で用いる。
古今(905‐914)離別・三八七「命だに心にかなふ物ならばなにか別れの悲しからまし〈白女〉」
更級日記(1059頃)「なにごとも心にかなはぬこともなきままに」
(ロ) 単独で用いる。多く「…がかなう」の形で用いる。
落窪(10C後)四「その夜思ひ臥したりし本意の、皆かなひたるかな」
徒然草(1331頃)一八九「頼みたる方の事は違ひて、思ひよらぬ道ばかりはかなひぬ」
③ (多く打消の語を伴って用いられる) …することができる。また、することが許される。
※宇治拾遺(1221頃)一二「わが心ひとつにてはかなはじ」
※天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事「キモヲ ツブイタレバ、モノユウコトモ canauaide(カナワイデ)
④ (多く打消の語を伴って用いられる) 競争相手として同程度である。匹敵する。
平家(13C前)九「手いたうせめられたてまって、かなはじとや思ひけん」
※雁(1911‐13)〈森鴎外一四「あんな利口な人だから、どうせ喧嘩をしては愜(カナ)はない」
[2] 〘他ハ下二〙 ⇒かなえる(適)

かな・える かなへる【適・叶】

〘他ア下一(ハ下一)〙 かな・ふ 〘他ハ下二〙
① うまくあてはまるようにする。ある条件に適合させる。
※大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)八「苟しくも言ふ所、理に合(カナヘ)(し)めつれば、尚を天仙帰敬を得たり」
制度通(1724)四「宋も唐も制によりて功臣号あり。〈略〉二字づつ義を協へて新に作るもあり旧号によるもあり」
② 思うとおりになるようにする。願いを成就させる。
※竹取(9C末‐10C初)「願ひをかなふることの嬉しさとの給て」
※源氏(1001‐14頃)明石「思ふ心をかなへむと仏神をいよいよ念じ奉る」

かな・ゆ【適・叶】

〘他ヤ下二〙 (ハ行下二段動詞「かなふ(適)」から転じて、室町頃から用いられた語。多くの場合、終止形は「かなゆる」) =かなえる(適)日葡辞書(1603‐04)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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