遠山(読み)とおやま

精選版 日本国語大辞典 「遠山」の意味・読み・例文・類語

とお‐やま とほ‥【遠山】

〘名〙
遠くにある山。遠方に見える山。えんざん。
万葉(8C後)一一・二四二六「遠山(とほやま)に霞たなびきいや遠に妹が目見ねばあれ恋ひにけり」
茶道で、点茶道具のある部分が遠くにある山の形に似ているものをいう。
(イ) 茶壺の肩の山形の横筋。〔茶具備討集(1554)〕
(ロ) 茶碗の釉(うわぐすり)をかけてできた模様が遠山の姿に似ているもの。
琵琶の裏板の部分名。山形に彫刻されている。〔楽家録(1690)〕

えん‐ざん ヱン‥【遠山】

〘名〙
① 遠くにある山。遠くに見える山。とおやま。うっすらと青いさまを、美人の眉(まゆ)などにたとえてもいう。→遠山の眉
※和漢朗詠(1018頃)下「嬋娟たる両鬢は秋の蝉の翼、宛転たる双蛾は遠山の色〈張文成〉」
平家(13C前)一〇「遠山の花は残の雪かとみえて」 〔江淹‐別賦〕
② 琵琶の胴体裏面と棹(さお)との接続する部分の雁金(かりがね)
※百詠和歌(1204)一一「甲に有遠山之号

とおやま とほやま【遠山】

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デジタル大辞泉 「遠山」の意味・読み・例文・類語

えん‐ざん〔ヱン‐〕【遠山】

遠くに見える山。とおやま
[類語]全山深山しんざん深山みやま奥山端山はやま外山

とおやま【遠山】[姓氏]

姓氏の一。
[補説]「遠山」姓の人物
遠山金四郎とおやまきんしろう
遠山啓とおやまひらく

とお‐やま〔とほ‐〕【遠山】

遠方の山。遠くに見える山。
葉茶壺の肩にある、ひもを通す耳。
遠山灰」の略。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「遠山」の意味・わかりやすい解説

遠山
とおやま

長野県南端、天竜川の支流遠山川一帯の地方名。行政上は飯田市(いいだし)南信濃(みなみしなの)、上村(かみむら)地区にわたる。赤石山脈伊那山地(いなさんち)に挟まれた幅500メートル前後の深い谷で、長く隔絶山村であった。現在もJR飯田(いいだ)線平岡駅から上村まではバスで約1時間を要する。中世以来、秋葉街道が通り、信州(長野県)と遠州(静岡県)を結ぶ重要な交通路であったが、飯田線の開通で陸の孤島化した。急傾斜地にコンニャク、茶、ソバなどの栽培が行われ、民家も斜面に立地する。隔絶地であるため、民俗芸能、説話などが残り、湯立神楽(ゆだてかぐら)が演じられる「遠山の霜月祭(とおやまのしもつきまつり)」は国指定重要無形民俗文化財。

[小林寛義]

『『遠山まつり』(1956・長野県教育委員会)』


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普及版 字通 「遠山」の読み・字形・画数・意味

【遠山】えんざん

遠くの山。

字通「遠」の項目を見る

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