違棚(読み)ちがいだな

精選版 日本国語大辞典 「違棚」の意味・読み・例文・類語

ちがい‐だな ちがひ‥【違棚】

〘名〙 二枚棚板左右段違いに取り付けた棚。床の間書院などの脇に設ける。ちがえだな。とこだな。⇔一文字棚
看聞御記‐応永二六年(1419)七月七日「客殿立屏風、唐絵四五幅懸之、厨子ちかゐ棚等置く物之在り」

ちがえ‐だな ちがへ‥【違棚】

※娵入記(1443‐73頃)「くろたなとは、ちがへだなの事なり」
南方録(17C後)墨引「西湖家に入たる天目、盆にのりて、ちがへ棚の袋の内、又ちがへ棚の上棚にもかざる」

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改訂新版 世界大百科事典 「違棚」の意味・わかりやすい解説

違棚 (ちがいだな)

書院造を特徴づける構成要素の一つで,主座敷を飾る固定装置として押板(おしいた),付書院と組み合わせる。置棚の一種として違棚が出現したのは室町時代中期ごろで,会所座敷飾の装置の一つに厨子(ずし),卓とならんで違棚が使用されている。会所の恒常化とともに会所座敷の飾りの場として,押板,付書院と組み合わせて座敷の一隅に固定されるようになった。足利義政が経営した小川殿や東山殿の諸殿舎で,主座敷に押板,付書院と組み合わせた違棚の用例が《御飾書》に見える。また東山殿の遺構の一つである慈照寺銀閣寺)東求堂の書院,同仁斎の一隅に付書院と組み合わせた違棚がつくりつけられていて,違棚の最古の遺構として著名である。近世に入ると書院造形式定型が完成し,違棚も発達して変化に富んだ諸種の型を生んでいる。江戸時代には木割書(木割)が編まれ,出版普及したが,そのうちに〈棚雛形〉があり,違棚の標準型から変形型まで48種を分類紹介している。違棚の間口は1間,半間を標準とし,1間半以上は特例であった。その基本的構成は天袋と複数の棚板の組合せ,とくに棚板の組合せに多様な変化を生んでいる。棚板はケヤキ材が普通で,ときには種類の違った銘木からつくり,その材質の変化と組合せに技巧を凝らしたものがある。桂離宮の桂棚はその好例である。
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百科事典マイペディア 「違棚」の意味・わかりやすい解説

違棚【ちがいだな】

床の間の脇に2枚の板を左右段違いにして作りつけた棚のこと。上板と下板を結ぶ束(つか)をえび束,上板の端の突起を筆返しという。いけ花,装飾品等を置き,形式は多様であるが,天袋地袋を併設することが多い。寝殿造に用いられた物品を収納する厨子(ずし)棚が,中世の書院造で建築化されたもの。
→関連項目茶箪笥

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「違棚」の解説

違棚
ちがいだな

上下2段の棚板を,左右食違いにつった棚。2枚の棚板の間に海老束(えびづか)をいれ,上段棚板の端に筆返し(ふでがえし)をつける。書院造の床の間や書院の脇に室内装飾装置の一つとして設けられるもので,上部に天袋(てんぶくろ),下部に地袋(じぶくろ)を備えるものが多い。本来の機能は,茶の湯棚や文具棚などとしてさまざまな道具・工芸品を並べ飾ることにあったが,桃山時代以降そうした機能はしだいに失われ,室内装飾の装置となる。江戸時代の大工書に多種多様な棚の意匠が集められているのはその結果である。

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世界大百科事典(旧版)内の違棚の言及

【棚】より

…この棚の大きさは間口が間半,1間のものが多く,構成は棚板だけのもの,袋棚や厨子棚を組み合わせたものなど種々ある。違棚は複数の棚板を左右から上と下にくい違いに釣った棚で,香炉,食籠,花瓶,茶器などを飾る。袋棚は床の間や棚の上方または下方に設けられる小戸棚で,引違いの戸襖が付く。…

【床の間】より

…奥壁の上部の天井廻縁(てんじようまわりぶち)に折釘(おれくぎ)を打ち,1幅から4,5幅が対になった軸装の書画を掛けられるようにする。床板の上には香炉,花瓶,燭台からなる三具足(みつぐそく)を置き,床の間の両隣には書院と違棚(ちがいだな)を設けるのが正式である。このような書院造の床の間に対して,茶室や数寄屋にも書画を飾る床の間が設けられるが,この場合は形式はかなり自由に扱われ,樹皮のついた床柱や形の変わった床柱が使われ,内部を壁で塗りまわした室床(むろどこ)や洞床(ほらどこ),落掛から床の上部だけを釣った釣床(つりどこ),入込みにならず壁面の上部に軸掛けの幕板を張っただけの織部床(おりべどこ)など,多様な形式のものがある。…

※「違棚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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